直接数値計算(DNS)などの計算科学的手法により、(1)小スケールの渦構造の大スケール統計への影響、初期に十分小さなスケールに局在する擾乱(誤差場)の乱流中での時間発展、乱流の減衰則などの乱流の動力学を解明し、(2)ウェーブレット解析を用いた平行二平板間乱流の情報縮約手法を開発した。(1)では規範的な乱流である3次元一様乱流に的を絞った。主要な成果の概要を以下に示す。 (1) 小スケールの典型的な渦構造であるチューブ状の渦を破壊する外力を導入し、計算機診断を用いて、大スケール統計が、その渦構造の影響に鈍感であることを示した。一様等方乱流における誤差場のある波数での生成は、相対誤差エネルギーが小さいスケールで活発に起きること、その波数より大きいスケールの寄与が支配的であることを示した。H27年度に、誤差場が、低波数側で波数の4乗、時間の6乗に従って自己相似的に発展することを発見し、大スケールの誤差場が主要な寄与をしていることを示した。パッシブスカラー乱流の減衰において、DNSにより、Corrsinの不変量の存在を示した。さらに、十分発達したのちに、スカラー場の非等方性の程度がほぼ保たれることを発見した。密度勾配による浮力を受けた一様成層乱流の減衰も調べた。比較的強い成層の場合に、理論的に予想されている減衰則を部分的に支持する結果が得られた。 (2) 直交ウェーブレット解析を応用して平行二平板間乱流の秩序渦度を抽出した。約数%の自由度から成る秩序場が、乱流場の統計や渦構造をよく再現することを示した。平成27年度に、残りの自由度から成る無秩序速度場の揺らぎがロジスティック写像によく従うこと、秩序渦の発散の影響は無視できるほど小さいことを示した。 これらの結果は、乱流の普遍性を解明し、その知見に整合する情報縮約手法の開発に貢献すると期待される。
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