研究課題/領域番号 |
25390152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 彰洋 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50335204)
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研究分担者 |
梅野 健 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10358872)
澤井 秀文 独立行政法人情報通信研究機構, その他部局等, その他 (70359074)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 航空機ネットワーク / 国際情報交換 / 津波 / 空間リスク計量 / 経済社会システム / 一般化パレート分布 / 政府系オープンデータ / メッシュデータ |
研究概要 |
本年度は以下の研究開発を行った。 (1)データ共有プラットフォームの構築:京都大学内にデータ共有サーバを設置し、京都大学とNICTに設置されたクライアントPC上から暗号化通信を使用することにより安全にデータを共有する仕組みを構築した。 (2)位置情報付き経済社会データベースの構築:人口、経済活動、航空輸送統計、エネルギー消費量に関するデータを総務省統計局、国土交通省、United Nations Statistics Division、geonameから収集、整理しデータ共有プラットフォーム内データベースサーバー上に蓄積した。日本国内においては1km四方3次メッシュデータにより国勢調査人口データ、経済センサスデータ、標高傾斜角データを連結したデータを構築し、標高と人口および労働者分布に関する分析を行った。 (3)自然災害リスク空間分布の定量化:地形、地震、津波、火山噴火のカタログデータ(過去1000年分)をアメリカ気象大気庁(NOAA)の公開データから収集、整理し、データ共有プラットフォーム内のデータベースサーバー上に蓄積した。更に、一般化パレート分布を用いた津波高さに関する確率外挿方法を用い津波被害の発生頻度を推定するための分析用ソフトウエアをR言語を用いて実装した。アメリカ気象大気庁のデータについては付加的なデータ検証作業が必要であることが認識された。 (4)航空機データの収集と整備:世界の商用空港に関する位置と性能に関するデータを収集・整理し、データ共有プラットフォーム内のデータベースサーバ上に蓄積した。オープンデータに基づく空港データには付加的なデータ検証作業が必要であることが認識された。日本国内におけるタイムテーブルデータをアメリカFlightaware社から購入し、国内の輸送状況に関するデータ可視化と分析作業を行った。 (5)国際会議に参加することによる国際情報交換の実施
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度研究実施計画は(1)データ共有プラットフォームの構築、(2)位置情報付き経済社会データベースの構築、(3)自然災害リスク空間分布の定量化(4)カオス乱数を用いた最適ネットワーク探索アルゴリズムの理論的検討の4項目であった。(1)データ共有プラットフォームを京都大学内に構築し、暗号化通信を用いることにより安全にデータを共有するための仕組みを構築した。(2)総務省統計局、国土交通省、UN Statistics Division、geonameが提供するオープンデータを用いて経済社会データベースを構築した。(3)津波、地震、火山噴火に関する自然災害データ(過去1000年分)をアメリカ気象大気庁の公開データベースから蓄積し、一般化パレート分布を用いた津波確率の外挿方法によりハザードの推計を行った。更に、実データに基づく国内空港パラメータの抽出方法を開発し、抽出された国内空港パラメータと輸送統計データを用いた最適化方法の検討を行った。津波データ分析中にNational Geophysical Data Center / (NGDC/WDS) Global Historical Tsunami Database, Boulder, CO, USA. (Available at http://www.ngdc.noaa.gov/hazard/tsu_db.shtml)のデータ中に不整合が存在することを見出した。これは1933年3月2日17時30分54秒三陸沖で発生したM8.4の地震による津波の記録であり、実際には岩手県広田町(北緯38.995度,東経141.7度)で観測された19.50メールの津波上陸の事象を兵庫県広田町(北緯34.75度,東経135.35度)で観測したとして記録がなされていると推測される。(4)カオス乱数法を用いた最適化方法の高速化について人工データを用いた基礎的な検討を行った。このことから当初の予想以上に順調に研究計画は進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は日本国内に特化して津波被害発生確率の推計と国内線旅客機ネットワークに関するデータの収集およびこれらを用いた空港リスクと経済性の分析を行い、本研究で必要とされるデータの確定と分析用ソフトウエアの開発、分析アルゴリズムの精度向上を行った。今後の研究推進方策として、以下2つが挙げられる。 (1)最適化アルゴリズムの開発:実データから抽出される空港パラメータを用いた自然災害リスク、経済性、利便性を考慮した航空機ネットワークの多目的最適化方法の開発(佐藤・澤井担当) (2)データ規模の拡充:世界規模での航空輸送統計データの収集と、そのデータを用いた分析、ならびに、世界規模での航空機ネットワークの最適化計算(佐藤・澤井担当) (3)カオス乱数を用いた最適ネットワーク探索アルゴリズムの実装と数値的な有用性実証(梅野担当)
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度研究計画で分担者梅野健教授担当分のカオス乱数を用いての最適化アルゴリズムの開発と効率化に関する研究が理論的な検討および人工データを用いた基礎研究に集中する必要があることが実施中に判明した。そのため、カオス乱数を用いたネットワーク最適化計算アルゴリズムの検証に集中して研究を行う必要があったため、データ共有プラットフォームへPCを接続することは行わない判断をした。そして、データ共有プラットフォームに接続するためのPC購入を当初計画から変更して次年度に行うこととした。この理由により、次年度使用額が生じてしまっている。 次年度中にカオス乱数を用いての最適化アルゴリズムが実データを用いて分析できるレベルに到達すると予想されるため次年度中にこの未使用額を用いて、データ共有プラットフォームへ接続するためのPC1台を京都大学において購入する予定である。
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