研究実績の概要 |
導電率・誘電率に不均質な異方性を有する大規模ボクセルモデル内の低周波電磁界の数値解析手法について、高精度・高速・大容量化を図り、計算法の高度化を目指してきた。平成27年度の主要な成果は以下の通り。 1. 面要素片側の物理量のみで表現される境界条件式を用いる境界要素(片側面要素)の概念を明確化し、面要素を用いるモーメント法と6面要素を用いるモーメント法とを、どちらも片側面要素に基づいて統一的に表現できることを示した。これにより、これら2種のモーメント法を併用する際の要素定義規則を、4項目にまで簡潔化できた。また、6面要素を用いるモーメント法は境界要素法の一種であるが、体積要素をエミュレートする要素であることが明確になり、概念整理が進み見通しが大変よくなった。 2. 異方性導電率を含む人体モデルをDTI画像から作製し、モデル内電界・電流密度を計算する場合、実測画像から推定した導電率はボクセル毎に値が異なる。このように、ほとんどあらゆる位置で隣接ボクセルと不連続な導電率を有するモデルで、電界・電流密度を適切に計算できることを、各ボクセルを細分割したモデルの解析により検証した。組織ボクセル数176,673個・未知数606,277個のモデルを基準として、全ボクセルを3×3×3分割(4,770,171ボクセル・15,166,017未知数)、5×5×5分割(22,084,125ボクセル・69,098,725未知数)、7×7×7分割(60,598,839ボクセル・188,296,645未知数)した細分割モデルの解析を行い、電界・電流分布が巨視的に合致していることを示した。 3. 2で述べた約2億未知数の頭部モデル計算時間は1台のPCで約5千秒となった。さらに直方体形状の均質異方性媒体の計算においては、約3億未知数のモデル計算時間は1台のPCで約3千秒となった。本手法の大規模高速性能が実証された。
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