公理的表現論関係では,単項バーンサイド環の単数群について研究した(共著でJ.Algebra に受理).バーンサイド環の公理的取り扱いに関する論文がほぼ完成し,最終点検中である.特に,抽象バーンサイド環の有限亜群のバーンサイド環(や有理表現環)への埋め込み定理の証明に成功した.これによって各種バーンサイド環を一挙に処理できる.特にべき等元公式や単数群,マッキー関手のブロック理論への応用の道を開けた. 母関数関係,ヴェイユゼータや離散力学系のゼータをカテゴリー論的に研究した.特にカテゴリーの普遍ゼータ関数の導入は,次々にゼータ関数(級数)生み出す意味でこれまでにない普遍性を持つ.これはDress などがかって研究した無限巡回群のバーンサイド環,ラムダ環,ヴィットベクトルの環の関係をさらに深めたものである.概要については,北大群論セミナー(2015/12/21),京都大学数研講究録1872(2014/1)に発表した.衝撃的だったのは,準同形定理から簡単にしたがうゼータ関数もどきの等式(20年以上前の結果)が,黒川の「絶対ヴェイユゼータ関数」に他ならないことであった. そのほかの関連分野として,代数学の統計学と考古学への応用がある.代数統計の分野では,高次元分割表の列挙問題(マルコフ連鎖モンテカルロ法に使う)への有限群論の応用がある.これはグレブナー基底の代わりに対称群からのランダムサンプリングを使い,収束の速さの評価に対称群の表現論を使うものである.抽象バーンサイド環の応用がある.鹿児島大学の青木繁氏が収束の速さへの応用の可能性を指摘してくれた.そのほか,金属考古学の鉛同位体法に関して,新井の距離がデータ解析でキャンベラ距離と呼ばれていて最近研究と応用が始まっていることが分かった.ニュートン法など数値解析への応用も見つけた.これについては,「北星論集」(経済学部2016)と一般向けの「数学セミナー」(2015/8--11).
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