研究課題/領域番号 |
25400005
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
名越 弘文 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70571165)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | L関数 / 値分布 / 独立性 / セルバーグ直交性 |
研究実績の概要 |
今年度は,次のように,大きく分けて3つの内容について成果を得ることができた。 (1) まずは,L関数たちの値分布論において,普遍性と呼ばれる性質とその応用についてである。これまで,この分野の研究は,複素変数の虚部 tを動かすといういわゆるt-aspectと呼ばれる場合についての研究がほとんどであった。そして,t-aspectに対しては,同時普遍性と呼ばれるもっと強い現象があり,それに関し研究代表者らは昨年度において新たな成果を得ていた。また,t以外のパラメータに関する普遍性の研究は,これまで2つあるいは3つのタイプしか知られていなかった。今年度,研究代表者は見正氏との共同研究で,q-aspectと呼ばれるものとd-aspectと呼ばれるものについて普遍性の結果を拡張し同時普遍性の結果を得た。さらには,特にd-aspectの場合の手法を使って,ある代数体たちの類数たちについて同時稠密性という新たな興味深い現象を得た。 (2) 次は,L関数の零点たちに関して,値分布論の応用としての成果である。SL(2, Z)の正則なcusp formに付随するL関数については,古典的な結果や予想が知られている。例えば,同時固有関数に対するL関数は一般リーマン予想が成り立つことが予想されている。今年度,研究代表者は,セルバーグ直交性などを使うことにより,同時固有関数でないものに対するL関数について,右臨界領域内の零点たちの存在に関する結果を得た。この結果は,上記の一般リーマン予想の主張を,ある意味において補完するものであると考えられる。 (3) 最後に,L関数たちの独立性に関する成果である。これもセルバーグ直交性の応用である。代数的微分独立性が,ラマヌジャン予想を仮定しなくても成り立つことが分かった。線形独立性等のもっと弱い結果は,他の研究者たちによって得られていたが,今回の結果はそれを改良している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書において,今年度は,L関数たちに対して単に値分布論の話題だけでなく独立性やディオファントス近似論との絡みを計画していた。実際に,それらの内容に関する新たな成果を得ることができた。ただし,申請時に考えていた方向とは少し違う方向である。しかし,当初は想定していなかった内容が得られてきており,当初の浅い考えをもっと深めたものとなっているため,研究としては順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,今年度に得られた成果たちを論文にまとめると同時に,しばらくは,それらに関連する残された課題を考察していく。交付申請書の研究実施計画を大幅に変更する必要はなく,計画に沿う形で研究を遂行する予定である。
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