研究課題/領域番号 |
25400008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
志甫 淳 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (30292204)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アイソクリスタル / エタール基本群 / チャーン類 / 対数的代数多様体 / ドラーム基本群 |
研究実績の概要 |
(1) pが冪零でかつ滑らかなスキームXに対して,適当な仮定の下でXのフロベニウス捻り上の準冪零可積分接続付加群の件とX上の準冪零可積分接続付加群の件が同値となり,これはOgus-Vologodskyによる標数pの非可換Hodge理論のある種の一般化となる.今年度はこの結果を書いた論文が雑誌への掲載に至った. (2) アイソクリスタルの圏とエタール基本群との関係について研究した.標数p>0の代数閉体上の射影的で滑らかな代数多様体Xのエタール基本群が自明なとき,X上のアイソクリスタルが自明なものしかないことをde Jongが予想した.昨年度までの研究で,Xの微分加群の最大スロープが非正のときに,収束アイソクリスタルという収束性のよいものに対してde Jongの予想を証明したが,今年度は,Xの微分加群の最大スロープが非正のときに,局所自由な格子を持つアイソクリスタルに対して予想を証明した.つまり,収束性の仮定をある条件下で弱めることが出来た.また,幾何学的に定義されるアイソクリスタルに対しては,微分加群の仮定なしで予想を証明した.前者の証明においては局所自由クリスタルの法p還元のチャーン類の消滅が鍵であり,それ自体興味深い結果である.以上の結果を論文にまとめ,改訂作業を行った.(H.Esnault氏との共同研究) (3) 標数0の準射影的正規交叉対数的代数多様体のドラーム基本群のホモトピー完全列についての結果を改良し,論文の改訂作業を行った.(V. Di Proietto氏との共同研究) (4) 標数0の対数的代数多様体の良い射に対して様々な手法で定義される相対的副冪単ドラーム基本群の定義の一致を示し,これにより定まる副冪単ドラーム基本群へのモノドロミー作用の代数的計算法を求める研究を引き続き行った.(B. Chiarellotto, V. Di Proietto氏との共同研究)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ogus-Vologodskyによる標数pの非可換Hodge理論のある種の一般化の研究は,期待通り雑誌への掲載に至った.de Jongの予想に関する研究については,当初の予想を超えた観点からのクリスタルの研究が進んでいると言え,今年度もチャーン類の消滅について興味深い結果を示すことができた.対数的代数多様体のドラーム基本群のホモトピー完全列の研究については論文の改訂が予定より長く続いているが,結果の改良に成功したのでおおむね順調であるといえる.対数的代数多様体の相対的副冪単ドラーム基本群とそのモノドロミー作用の計算についての研究は,今年度行った共同研究により議論の着実な進展が見られた.総合的に見て,研究は順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
対数的代数多様体にのドラーム基本群についての2つの研究は引き続き研究を継続する.de Jongの予想に代表されるアイソクリスタルとエタール基本群の関係についての研究も引き続き行う.エタール基本群において成立している性質のアイソクリスタルにおける類似についての研究を深めていく.また,クリスタルの法p還元のチャーン類の消滅により,クリスタルに対する特性類の理論の存在が示唆されるので,それも考察していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
学務の多忙につき,国内外への出張が予定したほどにはできなかった.また,コンピューターおよび図書の購入の一部が後回しになった.
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次年度使用額の使用計画 |
ノートパソコンやその関連機器,および図書の購入を行う.また,国内外の研究集会やセミナー等への出張を行い,研究成果の発信,研究動向の把握,共同研究の推進を行う.学務等の都合で出席できない研究集会については,必要に応じて大学院生に参加してもらい,研究情報の収集に努める.
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