研究実績の概要 |
(1) Xを正標数の代数閉体上の射影的で滑らかな代数多様体でエタール基本群が自明なものとするとき,X上のアイソクリスタルは自明なものしかないだろうという予想がde Jongにより提出されている.以前の研究でXの微分加群の最大スロープが非正でアイソクリスタルが収束アイソクリスタルであるかまたは局所自由な格子を持つときに予想を証明したが,今年度は論文の1つを小修正して再投稿した.また,より弱い仮定で予想を示すための研究を続けた.(H. Esnault氏との共同研究.) (2) p進穴あき円板上のp進微分方程式論の基本定理であるp進Fuchs定理およびp進局所モノドロミー定理のより強いヴァージョンがKedlayaにより示されていたが,彼の論文における証明の不完全な所や誤りを指摘し,その修正に取り組んだ.p進Fuchs定理の強いヴァージョンについては証明が修正できた.(K. S. Kedlaya氏との共同研究) (3) 標数0の標準的対数点上の正規交叉対数的代数多様体に対する対数的ドラーム基本群のホモトピー完全列を純代数的に構成し,幾何的副三角化可能商に対しての最初の射の単射性を示した論文を完成させ,投稿した.(V. Di Proietto氏との共同研究.) (4) 適切な条件を満たす標数0の対数的代数多様体の切断付きの射に対して,その相対的な副冪単ドラーム基本群の様々な定義が一致することを純代数的に証明した.応用として,安定対数的曲線の副冪単ドラーム基本群へのモノドロミー作用が純代数的に記述でき,Andreatta-Iovita-Kimが示した双曲的曲線のp進良還元判定条件の証明における超越的部分に純代数的証明を与えることができる.論文は執筆中である.(B. Chiarellotto氏, V. Di Proietto氏との共同研究.)
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