研究概要 |
1. J.C. Eilbeck 氏と M. England 氏との共同研究により, 前年度に得た楕円函数の加法公式の拡張した公式を, 論文にして投稿中であつたが, 受理されなかつた為, 修正して別の学術誌に再投稿した. これまで私と私の共同研究者が与へた (Hermite-)Frobenius-Stickelberger 型の公式は, 対応する代数曲線の自己同型に基くものであつたが, この論文は, さうでないより大きな対称性を持つことを示してをり, 重要であると考へる. この論文は, (Hermite-)Frobenius-Stickelberger 型の公式を究極的に一般化するための先駆けとなるものである. 2. 無限遠点が唯 1 点のみである一般の平面代数曲線に付随する多変数 sigma 函数の展開が, Hurwitz 整と呼ばれる数論的に良い性質を持つことを証明した. 但し, 少しだけそれを悪くする場合があり, その場合を完全な形に明示した. 論文は鋭意執筆中である. 3. J.C. Eilbeck 氏に補助的な計算を依頼しつつ, 種数 2 の代数曲線の Jacobi 多様体で, その準同型環が 4 次の非 Galois 拡大体の整数環に同型になるものの例を計算した. 志村・谷山著「近代的整数論」(共立出版) やその類書に述べられてゐる虚数乗法論を理解しやすくするには, この様な例は有用であると思ふ.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は, 共同研究者の在住する Scotland に出張して, 研究の発端を得る予定であつたが, 現状では, その発端を得るにはまだ時期尚早であると判断したため, これを留まつたので, その出張旅費分が次年度に持ち越しになつた. 職場が名城大学に移つたため, 時間さへ空けば, 多くの seminars への出席が可能になつた. 研究会に出席するなどして, 早急に研究の端緒を把むべく努力する. その上で, 先方へ出張するか, さもなくば, 先方を招聘する.
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