研究実績の概要 |
(1) Sigma 函数の原点における冪級数展開における Hurwitz 整性 (即ち, 原点におけるいかなる微分係数も, 本質的に, 元の代数曲線の定義方程式の係数の整数係数の多項式になること) について解明した (分母の 2 の冪が入ることがあるが, さうなる場合も完全に特定できてゐる). その結果を日本語で論文の形にまとめた. それを, 「愛知数論セミナー」(主催 : 柳井裕道) および「保型形式の整数論月例セミナー」 (主催 : 織田孝幸) にて口頭発表した. (2) 楕円函数の古典的な加法公式は Weierstrass の sigma 函数と P 函数の等式の形に表現される. それは, 函数 u → P(u) の引き戻しの 2 点を利用してゐる. しかるに, この函数をより一般な函数に変へてみると, 新しい加法公式が得られることを, 前年度までに発見してゐた. これは既知の加法公式をある意味で究極の形に一般化したものである. その結果を, 具体例を盛り込んで, 査読付きの学術誌に発表した (J. C. Eilbeck, M. England との共著). (3) 上記の一般化された加法公式をさらに種数の高い平面三浦曲線に拡張し, 慶応大における「日韓数論シンポジウム 2014」 (主催 : 加塩朋和 他) における招待講演, および 津田塾大でのシンポジウム 「Curves, Moduli and Integrable Systems」の招待講演にて, 発表した. (4) 以上の研究に必要な文献と, 今後, 必要になることが確実な文献を購入し, 読み進めた. それらは保型形式と整数論に関係する古典的な書物である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究費の補助を受けて 1 年経過した時点で、それまで所属してゐた山梨大学を辞職し、現在所属の名城大学に移つた. 類似の学部間の異動ではないため, 新しい講義の準備等に多くの時間を費やすこととなり, 予定のエフォートを確保できず, 当初予定の段階までは研究を進められなかつた. ただ, 査読付きの学術誌に 1 編の論文を出版できたので, 研究はある程度は進展し, 招待講演での発表もできた. 従つて, やや遅れが生じた状況と認識してゐる.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた海外渡航または招聘を検討中であるが, 先方にも, 計画当初は想定しなかつた種々の事情が生じてをり, 不可能な場合は email 等による議論で研究を進める. 補助金は資料の収集と国内での研究交流に利用する. また, 現在執筆中の論文を完成させる. 2 編乃至 3 編となる見込み.
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次年度使用額が生じた理由 |
本計画を申請したときに所属していた山梨大学を退職し, 名城大学に就職した初年度であるため当初の予定のエフォートを確保できなかつた. それにより, 予定してゐた海外渡航または招聘が実現できなかったため, 研究の方法を email による議論に変更した. それに伴ひ, 渡航または招聘用の費用が次年度に移行したため.
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