研究実績の概要 |
(1) J.C. Eilbeck 氏を名城大学に招聘し, 共同で研究を行つた (10.6-10.27). 内容は主に sigma 函数の満たす熱方程式が sigma 函数を特徴づけることの証明である. V.Z. Buchstaber と D. Leykin による一連の仕事を基礎として, 理論を組み立てる方針を取つた. しかし, 彼らの論文は非常に読みづらく, 誤りも多いので, それを修正し理解するのに多大な時間を費した. 幸ひ, 氏の滞在期間中に目途を立てることができ, 氏の帰国直後から共同での論文執筆を開始した. (2) Sigma 函数の原点での羃級数展開は Hurwitz 整と呼ばれる性質を持つ. この性質は種数 1 の場合は, 容易であつて, Weierstrass の楕円函数を調べればわかる. しかし, 種数が 2 以上の場合は同じ方針では証明できない. 本研究中に中屋敷厚氏の助言により, 可積分系の理論で知られる theta 函数の無限次行列式表示を利用する必要すれば, 証明が可能であることがわかつた. 証明を進める中で, 素数 2 に関してのみ, Hurwitz 整でなくなる場合があることがわかつた. ただし, それは事情が良くわかる現象であつて, そのことも踏まへた精密な結果を論文にまとめ, preprint server (arxive.org) に掲載した.
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