研究課題/領域番号 |
25400018
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石川 雅雄 琉球大学, 教育学部, 教授 (40243373)
|
研究分担者 |
岡田 聡一 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (20224016)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 数え上げ組合せ論 / 対称関数 / 直交多項式 / タイリング問題 / 超幾何級数 |
研究実績の概要 |
今年度の前半は主に交代行列や平面分割の数え上げに関連して現れるハンケル行列に関連して、ハンケルパフィアンとセルバーグ積分の関係について Jiang Zeng 氏と共同研究を行った。Catalan 数のハンケル行列式は経路の数え上げ問題から生じ、直交多項式との関連が深い。今回の研究では、これに類したハンケル型のパフィアンというものを定義し、それの評価が De Bruijn の公式を通して、Selberg 型の積分と関連付けられることがわかった。ここで、問題になるのは、ハンケル型の行列式に対して、どのような重み関数を見つければ Selberg 型の積分に帰着するかということである。これについては、前の論文に書いたほとんどの予想は解決を見たが、一方で1つだけ Gessel-Xin のタイプのハンケル型の行列式のパフィアン化に対しては解決できないでいる。これらの結果については 2014 年 6 月にアメリカ合衆国シカゴの De Paul University で開催された FPSAC'15 において, ポスターとして発表した。また、引き続き、2014 年 8 月にソウルで ICM'14 のサテライトとして開かれた The 19th International Linear Algebra Society Conference 及び 2014 年 9 月にオーストリアで開催された The 73rd Seminaire Lotharingien de Combinatoire においても口頭発表を行った。年度の後半は、学習院大学の中野氏及び津田塾大学の貞廣氏とともに Aztec rectangle の rhombus tiling について研究を行った。特に連続した hole がある場合に tiling の総数が超幾何級数で書けるという予想に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハンケル型パフィアンの予想に関しては、リヨン大学の Jiang Zeng 氏との共同研究により、多くの進展があった。Gessel-Xin 型の予想に関しては、さらに多くの、このタイプのパフィアンについて、予想ができることがわかった。最大の問題はハンケル型のパフィアンが現れる数え上げ問題を見つけることである。一方で、Aztec rectangle with consecutive holes の rhombus tiling の問題に関しては、まず、穴の数が偶数のときは Gessel-Viennotの公式に帰着させてハンケル行列式にできることがわかった。この方法は極めて技巧的で穴を避けない経路も数えることにより、成分は Schroder 経路の個数になる。このハンケル行列式を上岡氏の論文のように Laurent biorthogonal polynomials のモーメントの関連を使って拡張することによって、さらに一般的なハンケル行列式に拡張できる。この拡張によって Desnanot-Jacobi adjoint matrix theorem が使えることになり、タイリングの総数が 2 の冪と1次式の因子の積以外に、ある漸化式をみたす多項式で記述されることがわかる。また、最近では、この不思議な多項式がガウス超幾何級数を成分とする行列式(サイズは穴の個数)になることが、わかり、いろいろ不思議な予想ができ、その解決に向かって進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
Aztec rectangle with consecutive holes の研究は、まだ始めたばかりで、ガウス超幾何関数との関連を見つけた論文は見たことがない。これまで、hole が任意の位置のある場合は、tiling の総数は複雑すぎて研究されてこなかった。今回 hole が偶数個でそれが連続して並んでいる場合に、それがどこにあっても hole の位置の座標を使ったガウス超幾何関数で記述する式は意義深いと思われる。これまでの研究は hole の位置が中央線等対称性の高い場合にいろいろな研究がなされてきた。そういう意味では超幾何関数を使う研究は、これまでのいろいろな研究結果をさらに拡張できる可能性を秘めている。いろいろな tiling 問題や random matrix theory との関連など、さらにいろいろな理論を勉強し、研究を深めていく必要性を感じる。2015 年度は 7 月に大韓民国で開催される FPSAC'15 に参加する予定である。その前後に大韓民国大田市の NIMS で開催される 2015 NIMS Thematic Program on Combinatorics に3週間、招聘されていて、FPSAC'15 の後に開催されるワークショップで研究発表を行う予定である。現在の研究をさらに進展させると共に、国内外で開催される研究集会で研究成果を公表して行くことが大事である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に海外出張を計画していたが、4年次の担任教員であり、卒業式などの日程で調整の結果、京大数理研での可積分系の研究集会や日本数学会の国内出張に切り替えた結果、予算が少し残ることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
2015 年度には、現在ボストンに滞在中の共同研究者の貞廣氏(津田塾大学)を中野氏(学習院大学)と一緒に訪問し、共同研究を続ける予定であり、また、同時にマサチューセッツ工科大学の Stanley 教授も訪ねたい。他にもリヨン大学の Jiang Zeng 氏は 2015 NIMS Thematic Program on Combinatorics に参加していて、NIMS を訪ねた際に、Zeng 氏や Jang-soo Kim 氏との共同研究を続けたい。さらに、Seminaire Lotharingien de Combinatoire の際にリヨン大学等を訪問し、Jiang Zeng 氏や Christian Krattenthaler 氏等と研究交流を行う予定である。
|