平成27年度は大韓民国大田市の KAIST や NIMS で開催された代数的組合せ論のプログラムに参加し、Richard Stanley 氏を含め、この分野の多くの研究者と情報交換を行った。7月には千葉大の萩原氏が主催した Algebraic Combinatorics の輪講会に参加し、Robinson-Schensted-Knuth 対応について解説した。また、8月にマサチューセッツ工科大学を訪問し、Richard Stanley 氏、Tom Roby 氏と会い、また、1年間マサチューセッツ工科大学に滞在中の貞廣氏や中野氏と共同研究を行った。特に、穴あきのアステカ長方形のドミノタイリングの個数について、その行列式表示を簡単化する手法について研究した。この行列式表示は Schroder path の個数を成分とする行列式であるが、Riordan array になっており、成分の母関数を用いて巧く変形をすることが重要である。また、ガウスの超幾何級数の隣接関係式が重要な役割を果たすが、それを母関数を使った変形と組み合せる。c=0 の場合は証明できることがわかったが、一般の c での予想式は LU-分解に似た行列式の分解に帰着させようと努力している。また、9月には、リヨン大学の Jiang Zeng 氏を訪問すると共に Frederic Jouhet 氏や Philippe Nadeau 氏などの研究者と情報交換を行った。また、イタリアの Bertinoro で開催された Seminaire Lotharingien de Combinatoire に参加し、Coxeter 群や対称群の表現に関する興味深い話を聞いた。10月には京大数理研で開催された研究集会「組合せ論的表現論とその周辺」に参加し、研究成果を発表した。
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