研究課題/領域番号 |
25400020
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
古澤 昌秋 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50294525)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 相対跡公式 / 保型エル函数 / エル函数の特殊値 |
研究概要 |
階数2の一般斜交群の保型表現に付随する、スピノルL函数と呼ばれる4次のオイラー積で定められるL函数の、函数等式の中心における特殊値と、ベッセル周期と呼ばれる保型形式の周期との関係を調べる相対跡公式についての研究を継続し、進展させた。 平成25年度において、具体的には、この相対跡公式の雛形ともいえる、Erez Lapidによって提唱されたGL(2)の場合の相対跡公式についての本格的な研究を、Kimball Martinと森本和輝との共同研究として開始した。また、この相対跡公式と、二次拡大E/Fに関して、GL(2n,F)についてのGL(n,E)周期を調べる相対跡公式との関係についての考察をKimball Martinとの共同研究として行い、論文の電子版はすでに公開されている。 一方、森本和輝との共同研究として、GL(2)と定符号の特殊直交群とのテンソル積L函数の、Deligneの意味での臨界点における特殊値の代数性についての研究を行った。我々の手法では限界と思われる場合にまで拡張できた。具体的には、基礎体は任意の総実代数体、特殊直交群の無限素点における表現は任意、臨界点は用いられるEisenstein級数の絶対収束領域内に入るものすべて、である。論文としてまとめられ、現在投稿中である。 後者の研究成果については、2014年1月の京都大学数理解析研究所における研究集会において講演発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相対跡公式の研究に関しては、以前から気になっていた、Guo-JacquetのGL(2n)相対跡公式との関係がほぼ明らかになった。具体的には、我々のGSp(4)跡公式は、GL(4)相対跡公式の直接的な系としては得られないことが判明し、少し安心した。しかし、この二つの関係の考察からは、まだいくつかの興味深い事実が得られるように思われる。 また、GL(2)相対跡公式については、模範とすべき先行研究であるJacquetの論文を参考にしながら、これまでのところは、順調に研究が進んでいる。 GL(2)と特殊直交群のテンソル積L函数の特殊値に関しては、興味深い結果が得られたのではないかと思う。我々の結果は特別な場合として、GL(2)のRankin triple L函数のunbalancedと呼ばれる場合の結果を含んでいる。これは、これまで長い期間、あまり進展が無かった場合であり、我々の貢献は有意義だったのではないだろうか。現在のところ、Rankin triple L函数の場合を除いて、GL(2)と定符号特殊直交群のテンソルL函数の数論的な意義は具体的に解明されているとは言い難いが、今後の発展には大いに期待が持てるのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
相対跡公式に関しては、GL(2)の場合の跡公式を完成させたい。non-archimedean素点におけるsmooth machingについては、順調な進行が期待できる。archimedean素点については、non-archimedeanの場合ほどには、まだ先行きが見通せてはいないが、GL(2)の実Whittaker modelに関しては色々な人々による様々な研究結果の蓄積があるので、それらがうまく活用できるのではないかと期待している。相対跡公式が確立できたならば、それの応用として、できるだけ明示的なL函数の特殊値の表示公式を得たいと考えている。それには、試験ベクトルをどのように選ぶのかの問題が関わってくる。共同研究者のKimball Martinは、試験ベクトルに関してはこれまでにも研究経験があり、彼からの貢献が大に期待される。これらが順調に進行したならば、いよいよ、GSp(4)の場合への本格的なattackが開始できる。 GL(2)と特殊直交群のテンソル積L函数の特殊値に関しては、その発展や応用を考えたい。高次元のジーゲル保型形式と比べて、IV型対象領域上の正則保型形式については、これまでに知られている事実が大変少ないように思われる。カスプ形式のペーターソン内積に関する直交補空間がどのようなEisenstein級数で張られるのか、といったような基礎的な問題もはっきりしていないように思われる。地道にこれらから研究を進める必要があるかもしれない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本科学研究費補助金によって招聘を予定していた外国人研究者について、当人が本国にある財団の研究資金に採択されたので、それを訪問の費用に充当することにより、こちらが負担する必要がなくなったのが理由である。 平成26年度は4月にドイツのOberwolfachにおける研究集会、6月にカナダのBanffで開催される研究集会にそれぞれ一週間程度の予定で参加する。また、12月にも、アメリカのBerkeleyで開催される研究集会に参加することを計画している。繰越された助成金を、これらの国際研究集会への参加に当てることによって、国際的研究協力を一層推進したい。
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