研究課題/領域番号 |
25400034
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 太初 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50466546)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アソシエーションスキーム / 距離正則グラフ / 交叉定理 / 半正定値計画 |
研究実績の概要 |
1. Tilburg 大学の Edwin van Dam 氏及び中国科学技術大学の Jack Koolen 氏と平成23年度より継続して執筆を進めてきた、距離正則グラフに関する解説論文が本年度ようやく完成した。最終的に122ページ及び650弱の引用文献を擁する長大な論文となった (arXiv:1410.6294)。現在投稿中である。この論文の執筆作業を通して得られた距離正則グラフの理論に関する膨大な知見の蓄積は、今後の研究の基盤となるものである。
2. 私の学生の渡邊悠太氏 (M2) と共同で、重要な距離正則グラフの例である Grassmann グラフについて、Terwilliger 代数と呼ばれる非可換半単純代数の既約加群を全て決定することに成功した。ただし、通常の Terwilliger 代数は各頂点に付随して定まるが、ここでは descendent と呼ばれる代数的・幾何的に非常に良い性質を持った頂点部分集合に拡張して考察した。証明は球函数に関する Dunkl の1970年代の結果をフル活用したものであり、直交多項式の理論の観点からも興味深い。11月に中国科学技術大学で開催された国際研究集会に於いて、この研究の成果について招待講演を行った。また、既に得られている関連した研究成果と合わせて、田中利恵氏も加えた3名の共著論文として現在執筆準備中である。
3. 琉球大学の徳重典英氏及び愛知教育大学の須田庄氏と共同で、有限集合の二つの部分集合族の間の、ある種の測度を考慮した交叉に関する定理を証明した。証明の基本的な方針は半正定値計画の双対性に基いており、昨年度須田氏と行った研究の手法を踏襲しているが、一方で組合せ的な議論も多く用いており、より一層込み入っている。成果をまとめた論文を現在投稿中であり (arXiv:1504.00135)、徳重氏が3月に口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
距離正則グラフに関する解説論文の執筆には平成23年度より膨大な時間と労力を注いできており、本年度最終的な完成に至ったことは非常に大きな進展である。また、須田氏と開始したプロジェクトである、半正定値計画法の理論の極値集合論への応用についても、徳重氏を迎えてさらなる成功を収めることができた。このプロジェクトに関する本年度の成果は代数的手法と組合せ的手法の融合によるものであり、本研究課題の遂行上重要なステップだと考える。Terwilliger 代数の表現論に関する渡邊氏との研究も、距離正則グラフの研究に於ける新しい「道具」の整備に関するものであり、本研究課題に於いてやはり重要な意味を持つ。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のテーマである、非可換代数の表現論に基く組合せ構造の研究については、最近いくつか新しい試みが始まっている。また、理論の応用の範囲自体もますます広がっており、これらを視野に入れて理論を深化・発展させることを目指す。特に、量子ウォークの理論との関連は有力なトピックである。12月から1月に研究協力者である Wisconsin 大学の Paul Terwilliger 氏を東北大学に招聘し、集中的な情報交換・研究打合せを行った。これを通して Terwilliger 代数に関する有力な研究テーマがいくつか得られており、順次取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に広島工業大学に於いてスペクトラルグラフ理論に関する研究集会を企画し、講演者の招聘等のために少々予算に余裕を持たせていたが、その一部が結局不要となったため。(本研究集会の後、インドネシアのバンドン工科大学に10日以上の出張が入ったため、残額を使用する機会はなかった。)
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次年度使用額の使用計画 |
来年度に於いても同研究集会の (現時点では) 筑波大学での開催を企画しており、やはり講演者の招聘等に充てる。
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