研究課題/領域番号 |
25400034
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 太初 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (50466546)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 代数的組合せ論 / 距離正則グラフ / アソシエーションスキーム / 符号 / デザイン |
研究実績の概要 |
1. 中国科学技術大学の Jack Koolen 氏、(元)浦項工科大学の Woo Sun Lee 氏及び Worcester 工科大学の Bill Martin 氏と共同で、Hamming グラフ上の「等差完全正則符号」に関する論文を執筆した。既に出版済みである。この論文ではまず当該概念の導入、基礎理論の展開を行った後、線形なものについて分類を本質的に完成させた。距離正則グラフ上の完全正則符号は、Terwilliger 代数と密接に関連したトピックであり、本研究計画に沿ったものである。
2. 私の学生の渡邊悠太氏と共同で平成26年度に行った Grassmann グラフの (一般化された) Terwilliger 代数に関する研究を Lie 理論の観点から根本的に見直し、より簡明なものに整理した。さらに、距離正則グラフの Terwilliger 代数のある種の既約加群に付随する「Terwilliger 多項式」に関する理論の拡張・一般化を行った。新たな進展を次々と付け加えていっているため共著論文の執筆に結局一年以上かかっているが、ページ数は本稿執筆時点で既に50ページを超えている。近日中に完成の見込みである。
3. 上海交通大学の坂内英一氏、坂内悦子氏、Yan Zhu 氏と共同で、(主に) 2進 Hamming グラフ上の「相対デザイン」に関する研究を行った。タイト、すわなち所謂 Fisher 型不等式で等号が成立し、さらに二つの「同心球面」上にある相対デザインは、コヒーレント配置と呼ばれる構造を持つことを証明した。さらにそのような相対デザインの存在が、ある種の直交多項式の根の整数性を導くことを証明し、これを用いて小さなパラメータの範囲の多くで非存在を示した。現在他の結果と合わせて共著論文の執筆を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Terwilliger 多項式や相対デザインの構造の研究等、Terwilliger 代数の理論及びその応用に関して、大きな進展を得ることができた。また、平成26年度にようやく完成した距離正則グラフに関する解説論文の、査読者のレポートに基づく改定も済ませることができ、近日中に掲載が確定する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った Terwilliger 多項式及び相対デザインに関する研究をさらに発展させる。前者に関しては距離正則二部グラフの辺に関する Terwilliger 代数の場合が重要であり、状況に応じて海外の研究協力者を含めた研究体制を取る等の対応も検討し、重点的に取り組みたい。後者については、直交多項式の手法をさらに推し進め、2進 Hamming グラフ上のタイト相対デザインの分類がある程度現実的な問題になるレベルまで持っていくことを目指したい。また、半正定値計画の手法の確立は継続的な課題であり、今後も他の課題と平行して取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月に東北大学で開催した「ミニ集会:代数的組合せ論とその周辺」に合わせた研究者の招聘のために調整していたが、最終的に招聘が1件にとどまったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究打合せや、定期的に開催している「組合せ論セミナー」での講演等の目的での研究協力者の招聘に使用する。
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