研究実績の概要 |
Xを正標数pの代数閉体上で定義された非特異射影多様体とする.このとき非負整数eに対し, Xのフロベニウス射をe回合成した射によるXの構造層の直像(以下, e次フロベニウス直像とよぶ)は局所自由層となるが, そのベクトル束としての大域的構造は, 小平次元などXの構造に大きく依存する.極端な場合として, Xがトーリック多様体のとき上記のe次フロベニウス直像は直線束の直和に分解するのに対し, Xが種数2以上の曲線の場合, すべてのe次フロベニウス直像は直既約であることが知られている.本研究の考察対象は, トーリックの場合を含む大域的F正則な射影多様体Xにおける次の二つの性質である:(直線束への分解) Xの構造層のe次フロベニウス直像は直線束の直和に分解する; (GFFRT性) e次フロベニウス直像の直和因子となる直既約ベクトル束の同型類は(eによらず)高々有限個である. 本年度は, トーリック多様体でない最初の場合として, 射影平面上の一般の位置にある4点を爆発して得られる曲面Xについて, フロベニウス直像の構造を完全に決定し, XのGFFRT性を示した. X上の因子E_i (i=1,2,3,4)を4点爆発の例外曲線, Hを射影平面上の直線の全逆像とするとき, Xのe次フロベニウス直像(e≧0)の直和因子となる既約ベクトル束は以下のいずれかであることを示した. 1. 直線束O=O_X, L_0=O(E_1+E_2+E_3+E_4-2H), L_i=O(E_i-H) (i=1,2,3,4). 2. 非自明な拡大0→O(-H)→G→L_0→0で与えられる階数2の直既約ベクトル束G. 3. 非自明な拡大0→L_1+L_2→B→O(E_3+E_4-H)→0で与えられる階数3の直既約ベクトル束B. 系として, G,L_0,...,L_4,OがXの導来圏の充満強例外列であることがしたがう.
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