平成27年度は以下の研究を行った。 (1) Cohen-Macaulay局所環のUlrichイデアルに付随するあるRHom複体の構造を決定し、Ulrichイデアルに関するさまざまな性質を得た。特に、1次元の概Gorensteinかつ非Gorensteinな局所環のUlrichイデアルは極大イデアル以外に存在しないことがわかった。 (2) 孤立特異点上の有限生成加群の有界導来圏のthick部分圏のうち剰余体を含むものを完全に分類し、極小重複度をもつCohen-Macaulay局所環の場合に標準thick部分圏を完全に決定した。また、同様の問題を加群圏に対しても考察し、基礎環が2次元以下の場合に剰余体を含むthick部分圏が必ずSerre部分圏になることを証明した。 (3) Cohen-Macaulay局所環上の有限生成加群が自由加群になるための必要十分条件を、あるExt加群の消滅によって与えた。この結果は、Cohen-Macaulay正規局所環上の階数1の極大Cohen-Macaulay加群に関してAuslander-Reiten予想が成り立つことを導き、太刀川予想に関するAvramov-Buchweitz-SegaとHanes-Hunekeの定理を回復する。 (4) 剰余体のシジジーに水平的にリンクする加群の直和因子の構造を調べ、各種のホモロジカル次元および深度の評価を得た。これにより、Gorenstein環の特徴付けに関するHolmの定理が回復された。
|