研究課題/領域番号 |
25400042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
島田 伊知朗 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10235616)
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研究分担者 |
石井 亮 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10252420)
木村 俊一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10284150)
平之内 俊郎 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30532551)
高橋 宣能 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60301298)
高橋 浩樹 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (90291476)
松本 眞 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70231602)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | K3 surface |
研究概要 |
K3曲面の自己同型群を計算する計算機プログラムの実装を完了し,いくつかのK3曲面に対して適用した.その結果,従来の方法では取り扱えなかった特異K3曲面,すなわち超越格子のグラム行列がそれぞれ[[2,1],[1,6]], [[4,1],[1,4]]および[[2,0],[0,8]]となる3つの特異K3曲面に対して,その自己同型群の生成元を書き下すことに成功した.また,従来の方法が適用できる特異K3曲面に対しては,きわめて短時間で計算結果を得ることができることを確認した.さらに標数5でアルティン不変量が1の超特異K3曲面に適用することにより,この曲面の射影モデルで巨大な射影的自己同型群を持つものを3つ構成し,その幾何学的性質と相互の関連を調べた.特に,6個の(16)_6型配置をなす96本の有理曲線を,このK3曲面のクンマー曲面モデル上に明示的に構成した.この射影モデルの研究の過程において,重要な強正則グラフであるHoffman-SingletonグラフおよびHigman-Simsグラフを代数幾何学的に構成することに成功した.また,Ballico-Hefez曲線との関連をしらべ,標数3および5においてアルティン不変量が1の超特異K3曲面Ballico-Hefez曲線を分岐曲線とする射影平面の巡回被覆をして得られることを示した. 複素K3曲面であるフェルマー4次曲面においては,直線のクラスが中間次元の整数係数ホモロジー群において生成する部分加群は原始的である.この結果は任意の次数のフェルマー曲面に対して拡張されている.この事実を高次元のフェルマー多様体に対しても拡張することを試み,いくつかの部分的結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの,従来の方法では取り扱えなかったK3曲面に関して具体的な計算結果を得ることができ,自己同型群を計算する計算機プログラムの有用性が確認できた.また,従来の方法でも取り扱えるK3曲面に対しても,多くの計算を自動化しかつ統一的な方法を採用することで,相互の関連が見やすくなった. 標数5でアルティン不変量が1の超特異K3曲面に対しては,計算量が大きすぎて,このプログラムは計算を終了させることができなかったが,計算の途中でいくつかの射影モデルを出力することによりこの曲面の非常に興味深い幾何学的性質を明らかにした.その結果グラフ理論への応用も得ることができた. 従って,計算機によりK3曲面の幾何学的性質を調べるというこの研究の目的は,射影モデルと自己同型群に関してほぼ計画通りの成果を挙げることができた. さらにこの計算機プログラムを書くにあたり作成したいくつかのサブプログラムは,Ballico-Hefez曲線とK3曲面の関連を調べる上で大変役に立った. したがってこれらのプログラムは,正標数特有の性質をもつ代数多様体の組み合せ論への応用を探る上で大変有用であると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
K3曲面の自己同型をネロン・セヴェリ格子への作用という格子理論的情報から幾何学的に復元する方法について研究する.とくに,位数が有限の場合にこの自己同型の与える商空間の構造ならびに分岐因子の構造を書き下す計算機プログラムを作成し,特異K3曲面の自己同型群に適用する. 複素数体上定義されたフェルマー4次曲面の自己同型群ならびに射影モデルの研究を開始する.作成した計算機プログラムによる予備的な実験では,このK3曲面に対する計算を完遂することは計算量が大きすぎて難しいことがわかっており,したがって新しいアルゴリズムを考える必要がある.ネロン・セヴェリ格子においてフェルマー4次曲面の標準的な偏極の近傍にある偏極を詳細に調査し,有限位数の非射影的自己同型をできるだけ多く求め,それらを幾何学的に実現し,さらにそれらの形成する多面体の構造を調べる. 標数2,3,5における具体的な超特異K3曲面の族をもとにして,周期からもとの超特異K3曲面を復元するという問題に取り組む.標数2においては,すべての超特異K3曲面は射影平面の非分離2重被覆として得られることがわかっている.この2重被覆の特異点の配置と周期との関係を明示的に記述する.また,標数5の超特異K3曲面とHigman-Sims群の関係を,標数11および標数23の超特異K3曲面にも拡張し,有限単純群との関連がないかどうかを調べる.さらに興味深い組み合せ論的構造を探す. 複素数体上定義されたフェルマー多様体の中間次元の整数係数コホモロジーの構造に関する研究を進める.正標数の体上においてBuchbergerアルゴリズムを高速で行う計算機プログラムをC言語で書き,4次元の場合に実験を行う. 研究上の情報収集と打ち合わせのために海外を含むいくつかの出張を予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた海外出張の計画を先方の都合に合わせて延期したため. 延期した海外出張を今年度に行う.
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