研究課題/領域番号 |
25400044
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
木本 一史 琉球大学, 理学部, 准教授 (10372806)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | α行列式 / 非可換調和振動子 / 特殊関数 / 表現論 |
研究概要 |
本研究は、表現論的な不変性や構造を背景にもつ数学的対象として特に行列式と調和振動子を取り上げ、それらのパラメタ変形によって生じる「ずれ」の効果として現れる量を調べることを目的とする。具体的には、α行列式と呼ばれる行列式の1パラメタ変形(およびその量子群類似)と非可換調和振動子と呼ばれる調和振動子の2パラメタ変形とを対象として、「元来の対象物」と「そのパラメタ変形」との間の差異を反映して現れる(変形パラメタを変数とする)関数について、それらの具体的な計算ないし特徴付け、及び背後にある表現論的構造による性質の記述を行うことを主たる目的とする。 1. スペクトルゼータ関数のs=kにおける値から生じるアペリ型数列を便宜上「k次のアペリ型数列」と呼ぶことにする。2次のアペリ型数列の母関数はテータ関数による表示を持つ(モジュラー性を持つ)。4次のアペリ型数列の母関数はモジュラー性そのものではないもののそれに近い変換則を持つことが分かっていたが、これがいわゆるアイヒラー積分の一般化を用いて表示されることから、より高次のアペリ型数列に関して一般化を試みている。その他、様々な次数のアペリ型数列をまとめた母関数も示唆的な形の積分表示を持つことを観察し、その背後にあると期待される構造を模索している。 2. α行列式の重み付き平均の計算のために行列式の2パラメタ変形が自然に現れるが、それがヤング部分群に関して両側不変な対称群上の関数や長方形ヤング図形に対応する既約指標などの記述にも有用であることが分かった。実際、これらの値をα行列式やリース行列式の値を用いて記述する公式を得た。長方形ヤング図形に対応する既約指標の公式についてはStanleyによる結果の別証明を与えていることになる。またリース行列式の特徴付けの初等的な証明を得た。これらの結果について学会で発表し、また論文にまとめて投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルファ行列式およびそのさらなる一般化を用いた対称群の指標や両側不変関数(帯球関数)についての研究に関して一定の結果を得て論文(プレプリントは arXiv:1403.3723 にある、投稿中)にまとめることが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
非可換調和振動子のスペクトルゼータ値およびそれに由来するアペリ型数については、主としてその母関数とアイヒラー積分の類似について引き続き研究を進める。 両側不変関数の値をリース行列式を用いて表す公式は、群行列式のリース行列式類似(若山正人、浜本けい等との共同研究)の計算にも利用できる。また、計算の過程で両側不変関数の値とある種の組み合わせ論的量のつながりが現れたので、表現論サイドからの組み合わせ論の問題へのアプローチなども関連問題として取り上げて取り組んでみたい。
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