研究課題
本研究は、表現論的な不変性や構造を背景に持つ数学的対象として行列式と量子調和振動子を取り上げ、それらのパラメタ変形によって生じる「ずれ」の効果として現れる量を調べることを主たる目的とする。具体的には、アルファ行列式と呼ばれる行列式の1パラメタ変形(およびその量子群類似やパラメタの特殊化)と、非可換調和振動子と呼ばれる量子調和振動子の2パラメタ変形とを対象として、元来の対象物とそのパラメタ変形との間の差異を反映して現れる(変形パラメタを変数とする)関数について、それらの具体的な計算ないし特徴付け、および背景にある表現論的構造による性質の記述を行うことを目指すものである。1.行数が列数の約数であるような長方行列に対して「リース行列式」という片側乗法性を持つ量が(アルファ行列式のパラメタの特殊化を通じて)作られる。対称群のあるヤング部分群に関する両側不変関数(便宜上「球関数」と呼んでいる)、ラテン方陣の数え上げ(偶方陣と奇方陣との個数差)、いわゆるプレシズムに関連した予想(あるテンソル積空間の間のintertwinerがどの既約成分を消すか)などが、リース行列式を要として同じ問題に帰着されることが分かった(単著論文を準備中)。2. 非可換調和振動子のスペクトルゼータ関数の特殊値の計算から現れるアペリ型数列の母関数、およびそこを起点とする(アイヒラー形式と呼んでいる)新たな枠組みの関数について研究を続けている。基本的な性質、アペリ型数列の母関数が具体例を与えること、などを含め、これまでに得られた結果をまとめた論文を準備中である(九州大学の若山正人との共著)。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Journal of Combinatorial Theory, Series A
巻: 133 ページ: 16-96
doi:10.1016/j.jcta.2015.02.002