研究課題/領域番号 |
25400052
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
塩田 徹治 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (00011627)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 代数幾何学 / モーデル・ヴェイユ格子 / フェルマー曲面 / 高種数曲線ファイブレーション / 楕円ファイブレーション / ネロン・セヴェリ群 / ピカール数 / ハイト公式 |
研究実績の概要 |
平成26年度におけるわれわれの最大の成果は、「フェルマー曲面の高種数曲線によるファイブレーション」のモーデル・ヴェイユ格子の解明である。 代数曲面の高種数曲線ファイブレーションについてのモーデル・ヴェイユ格子の定義と基礎付けは,研究代表者により、その概要が1992年学士院紀要に発表され,より詳細な理論が欧文論文集「代数幾何学のトレンド」(ケンブリッジ大学出版会,1999年)で与えられたが、その後あまり進展が無かった。 最近複素曲面のトポロジーの観点から,増田ー松本の論文(2013)は,フェルマー曲面の(1直線を軸とする)高種数ファイブレーションを調べ、その特異ファイバーの位置と型を完全に決定した。われわれは,この「フェルマー曲面上の高種数ファイブレーション」に対するモーデル・ヴェイユ格子を、前年度末から当26年度にかけて集中的に研究し,次の基本定理1,2,3 を得た。 1. モーデル・ヴェイユ格子のランク公式。即ち5次以上のフェルマー曲面の軸性ファイブレーションの生成ファイバーは,種数g>1の平面代数曲線であるがそのヤコビ多様体のモーデル・ヴェイユ格子のランクは、次数 m の明示的関数として与えられる。2. フェルマー曲面上の,軸直線と交わらない任意の直線は,ファイブレーションの切断を与える。特に次数 m と6とが互いに素のときは,モーデル・ヴェイユ群はこれらの切断で生成される。3. モーデル・ヴェイユ格子のハイト公式。2直線に対応する2つの切断の間のハイトペアリングは、直線達の交点数を用いた明示的な公式で与えられる。 1. の証明には(80年代の )フェルマー曲面のピカール数に関する塩田、青木昇の結果を用いる。また2.の証明は、最近の Schuett-Shioda-van Luijk および Degtyarev の結果による。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高種数曲線ファイブレーションのモーデル・ヴェイユ格子の研究は、研究代表者にとって永年の懸案であったが、トポロジーの視点から研究された増田ー松本の結果に接し、これを代数幾何的観点から再考することにより、われわれの目的に供することが出来た。当年度はまず複素フェルマー曲面の場合を扱ったが、研究方法は一般化と拡張の可能性を蔵している。
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今後の研究の推進方策 |
1.上の欄でふれた軸性ファイブレーションの方法を用いる一般化と拡張は多様である。①正標数,② (フェルマー曲面より一般に)直線をふくむ曲面,の高種数ファイブレーションの考察、等。 2 交付申請書記載の他のテーマの更なる推進。一つは、前年度の当報告書でも述べた有理楕円曲面の卓越族の研究成果を応用して、代数幾何の濫觴以来のトピックである「3次曲線と27直線」や「平面4次曲線の28双接線」などの問題を現代化して、より視覚的、あるいは立体的のモデルを構成することは数学の研究のみならず、教育的観点からも有意義と思われる。 以上の問題意識から研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の個人的事情(本人の健康状態および配偶者の療養・逝去)により,海外出張などをふくむ対外的な活動を断念したこと。 しかし、幸いなことに(研究実績の項で記したように)本年度中にも十分な成果を得ることができ、これにより研究計画の推進に結果的には支障を来さなかったことを付記しておく。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は必要に応じて、研究交流のために国内外の出張や招聘を考えたい。 具体的にはまず、5月に北京で開催される国際会議「数論的代数幾何学」に参加,招待講演の予定。 また、研究計画で述べた本研究課題の遂行により可能となった、代数幾何学の古典的問題の例示・視覚化やモデルの作成を実行する際に必要となる機器などの経費にあてることも考えている。
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