研究課題/領域番号 |
25400056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
高山 幸秀 立命館大学, 理工学部, 教授 (20247810)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代数幾何学 / 正標数 / Calabi-Yau3次元多様体 / 小平型消滅定理 |
研究概要 |
標数零のCalabi-Yau多様体の2次チャーン類の正値性は宮岡洋一氏の有名な結果であるが、正標数の場合については、Adrian Langer氏のstrongly semistabiityに関する結果を使って、ある条件のもとで成り立つことが示せる。それを使って、もしある条件を満たすCalabi-Yau 3次元多様体でH1-小平消滅定理の反例が存在すれば、そのH1-コホモロジーの次元は、その豊富因子のボリュームの6分の1になることが示せる。また、1999年版の廣門多様体においては、ある条件のもとでH1-小平消滅定理が成り立つことは、昨年度までの研究で分かっているが、Stefan Schroeer氏やChad Schoen氏のnon-liftableなCalabi-Yau3次元多様体のように、ファーバーが全て非特異なK3曲面であるようCalabi-Yau3次元多様体ならば、同様の性質が成り立つことも示せる。さらに2012年の高山の論文で、ある種の条件を満たす非特異一般型曲面が存在すれば、Raynaud-向井の方法でnon-liftableなCalabi-Yau 3次元多様体が構成できる可能性があることを示したが、そのような曲面自身が存在せず、結局Raynaud-向井構成では、小平消滅定理が成り立たないnon-liftableなCalabi-Yau3次元多様体は作れないことが示せる。今年度は以上の結果を得て、プレプリントに纏め、学術雑誌に投稿した。また、7月にはワルシャワで開かれた数論幾何学の研究集会に参加し、正標数の代数幾何学と数論幾何学との接点を探り、一定の認識を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Cynk氏らが発見したnon-liftableなCalabi-Yau 3次元多様体のクリスタリンコホモロジーをト・ラム・ウィットコホモロジーやそのスロープスペクトル列を使って計算するというプロジェクトは現在暗礁に乗り上げている。その理由は、この方面の計算技術を開拓し、廣門氏やSchroeer氏の例を計算してみせたTorsten Ekedahl氏が死去し、彼が残した論文やモノグラフが誤植や間違いだらけで理解が難しいことが挙げられる。いくつかの研究集会で内外の研究者に聞いてみたところ、数論幾何学の専門家達は既にこの計算技術には興味がなく、この方面について詳しい人がほとんど居なくなっていることが挙げられる。その他、Calabi-Yau多様体の2次チャーンクラスの宮岡の結果の正標数版は思った以上に難しく、Langer氏の指摘により、かなり不本意な条件をつけざるを得ず、部分的な結果にとどまっていることも、はなばなしい進展とは言えない状況の原因である。
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今後の研究の推進方策 |
1. Rudakov-ShafarevichのK3曲面における非自明なベクトル場の非存在性定理、2. 特異ファイバーを持つCalabi-Yau 3次元多様体の構成、3. Schroeer氏やEkedahl&Schepherd-Barron氏らによる、3次元Calabi-Yau多様体の変形理論、の3方面から検討を続け、面白い具体例の構成と変形理論の観点からの現象の理解を深めてゆく。
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