平成27年度は、単連結なCalabi-Yau 3foldに有限群の自由な群作用を与えることによって、基本群が自明でないCalabi-Yau 3foldを構成する問題に取り組んだ。これは、Arnaud Beauvilleが複素数体上の非単連結Calabi-Yau 3foldの具体例を構成した方法を自然な形で正標数の奇数次元のCalabi-Yau代数多様体に拡張したもので、ベッチ数についても、商多様体の方が元の多様体のそれ以下になることが示される。
この結果の応用として、標数ゼロに持ち上げることができない、すなわちnon-liftableなCalabi-Yau 3foldの新しい例を構成することができる。現在知られているnon-liftableなCalabi-Yau 3foldのうち、代表的な例である広門氏やS.Schroeer氏の例はいずれも単連結で、かつ3次ベッチ数が0であることによってnon-liftableとなっている。これらの多様体に対して、適当な有限群の自由作用を与えることができれば、それによる商多様体が再びnon-liftableなCalabi-Yau 3-foldとなる。ただ、有限群の自由作用を具体的に与える方法についてはよくわからず、今年度は標数3のSchroeer氏の例に対して2次の巡回群の自由作用が与えられることが分かった。
それ以外では、代数曲面の分類や特異点、アーベル多様体や群スキームについて、特に正標数の理論について再検討し、さらにはベルリンで行われた代数多様体の幾何学に関する国際研究集会や城崎の代数幾何学シンポジウム等に参加し、最新の研究動向を調査した。
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