研究課題/領域番号 |
25400057
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
柳川 浩二 関西大学, システム理工学部, 准教授 (40283006)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 組合せ論的可換代数 / cd指数 / 極小自由分解 / 正則CW複体 / 局所コホモロジー |
研究概要 |
既に受理された論文を次項に挙げるが、ここでは進行中・投稿中のものを中心に述べる。 まず、山口大学(現在は、大阪大学)の村井聡氏と共同で、flag complex のcd指数について共同研究を行った。これは、代表者の専門分野である「組合せ論的可換代数」の重要な話題の一つであるが、これまで扱った経験が無かった。今回、村井氏の発案のもと、代表者が以前に導入した一般的な手法である squarefree 加群を、適宜カスタマイズして応用した。cd 指数に関する既存の結果で最も顕著なものは、Karu による非負性の証明であるが、彼の議論を環論的に捉え直すことで、結果を精密化・一般化している。 次に、カタルーニャ工科大の J. Alvarez Montaner氏と共同で、Stanley-Reisner環の Cartier代数が有限生成となる為の必要十分条件を与えた(J. Algebra に掲載決定)。「ともかくも書き下す」と言った感じの条件は既知であったが、今回は、組合せ論的位相幾何学の視点からも自然で、簡潔な記述が得られた。同氏とは、よりホモロジー代数的・幾何学的な共同研究も進行中である。 3つ目に、福岡教育大学の岡崎亮太氏との共同で、Borel fixed ideal とその変種について研究した。このイデアルの極小自由分解は、Eliahou-Kervaire による古典的なものと、岡崎氏と代表者が構成した新しいもの(J. Algebraic Combin. 2013)とが有り、それぞれの利点を持つ。前者が正則CW複体を台とすることは、Mermin らによって示されていたが、後者も同様であることを証明した(Collect. Math. に掲載決定)。なお、どちらの場合も、剰余環が Cohen-Macaulay の場合には、対応する正則CW複体は球体と同相となることも今回得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に想定した幾つかの方向性の内、Borel fixed ideal の極小自由分解に付随するCW複体に関しては予想以上の進展が有り、また、flag complex のcd指数や単項式イデアルのLyubeznik数の研究への導来圏の応用など、当初考えていたものとは若干異なる角度で発展したものも有る。他方、これら以外の方向性については、あまり進展が無かった。トータルで考えれば、おおむね順調と言えるであろう。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り、申請時に想定していた幾つかの方向性のうち、進展が有ったものと無かったものとの差がはっきりしてきた。今後は、進展の有った有望な方向に集中する。具体的に言えば、(特定のクラスの)単項式イデアルの極小自由分解に付随するCW複体、flag complex のcd指数や単項式イデアルのLyubeznik数の研究への導来圏の応用などである。これらの題材に関しては、現在の研究方法をそのまま継続・発展させて行きたい。もちろん、新たに有望なアイデアが得られた場合は、適宜取り入れていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
計画していた海外出張が、所属校の用務と重なった為、行けなかったかことが最大の理由である。 共同研究を遂行中である岡崎亮太氏(福岡教育大学)とは緊密に連絡を取り、何度か訪問する予定である。この他、日本数学会の年会、代数学シンポジウム、可換環論シンポジウム、など例年参加している定期開催の各種研究集会に出席し、情報収集、意見交換、および(可能ならば)成果発表を行いたい。この他、不定期開催の研究集会で、当該研究課題と密接に関連するもの、成果発表が可能なもの(招待されるもの)が、例年通り幾つか出て来ると思われるが、これらにも積極的に参加したい。また、 Alvarez-Montaner(カタルーニャ工科大)との共同研究も佳境に入っているので、綿密な打ち合わせの為、再度訪問したい。 また、例年通り、資料収集や書籍購入も適宜行いたい。特に、岡崎氏との共同研究で、これまで殆ど知らなかった「有向マトロイド」の理論との関連が見えてきたので、これに関する参考文献を重点的に購入したい。
|