研究実績の概要 |
平成27年度に執筆・投稿した論文は以下の2本である。 一つ目は, Lukas katthaen氏 (オズナブリュック大学→フランクフルト大学)との共同研究であり,緩い条件下で,ネーター整域 R が Serre の(R_1)条件を満たすことと,R の標準加群の自己準同型環が R の整閉包と同型であることが,同値であることを示した。証明自体は容易であるが,青山陽一氏の著名な結果 (R が (S_2) 条件を満たすことと,R の標準加群の自己準同型環が R 自身と一致することとの同値性)と,対をなし,極めて自然なものと思われる。なお,上述の内容自体は可換環論一般の結果であるが,応用として,アファイン半群環の組合せ論的考察も行っており,当然ながら研究課題に即したものである。なお。当研究は,26年度末には端緒を得ていたが,27年度に論文にまとめ,学術雑誌への掲載も既に決定している。 2つ目は, 岡崎亮太氏(福岡教育大学)との共同研究で, アファイン有向マトロイドの有界複体の位相的性質を, 可換代数を応用して研究したものである。アファイン有向マトロイドは, 超平面配置の組合せ論的構造を抽象化したもので, その有界複体がいつ球体と同相となるかは, 70年代の Zaslavsky の研究に始まる重要な問題である。今回の研究では, アファイン有向マトロイドに(Sturmfels らの意味で)付随する可換環が Cohen-Macaulay となる為の組合せ論的特徴づけを与え,さらにこの時,有界複体が可縮な境界付きホモロジー多様体となることを示した。 この研究も25年度から着想を得ていたが, 2年間にわたり改良を加え, 27年度に論文の投稿を行った。この研究は, 28年度からの研究課題『アファイン有向マトロイドの位相的研究への可換代数の応用』へと発展した
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