研究課題/領域番号 |
25400058
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研究機関 | 一関工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 知邦 一関工業高等専門学校, 教授 (50259793)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 代数曲面 / ファイバー空間 / ファイバー空間の勾配 / 堀川指数 / 変形族 |
研究実績の概要 |
本研究においては、一般ファイバーが非超楕円曲線であるようなファイバー空間の構造を持つ非特異複素射影曲面を対象としている。主な研究目的は、(1)曲面の不変量に影響を与える退化ファイバーに対し、堀川指数を定義し分類すること、(2)堀川指数の総和の値を固定して曲面の構造を調べ、変形族を構成することの2点である。いずれの問題についても、本研究では主としてファイバー種数が3の場合と4の場合を対象に研究を進めてきた。 種数が3の場合は、ファイバー空間の低曲線が楕円曲線である場合の変形族の構成についての問題を扱った。この問題の解決のためには、まず、曲面の相対標準像を含む楕円曲線上の射影平面束の変形族の構成がなされなければならない。28年度は主に、この問題に取り組み、すべての射影平面束に対してそれを中心とする有効にパラメトライズされかつ完備である変形族の構成に成功した。しかし、その周りに存在する射影平面束の同型類を決定できていないものがいくつか残った。今回はこの点について解決できているものに限って論文にまとめて投稿し、受理された。(Canad. Math. Bull., to appear.) 種数が4の場合はさらに階数が3であるという仮定の下での堀川指数についての研究を行った。証明は大部分のところでできているのだが、あと1つの問題が解決していないため、まだ論文にはまとめられていない状況である。 28年度はさらに関連する問題として、平面曲線をファイバーとする局所的に自明なファイバー空間を持つある種の曲面についての研究も行った。このファイバー空間は特異ファイバーは持たないのだが、我々が対象とする特異ファイバーを含むファイバー空間を持つ曲面と比較することにより、我々が本来対象とする曲面の構造の問題を解決するのに役立つことが期待される。この問題は解決しており、論文にまとめ、投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般ファイバーが種数が3の非超楕円曲線である楕円曲線上のファイバー空間を持つ曲面の変形族の構成の問題は、射影平面束の変形族の構成がなされた後に取り掛かるべき問題である。射影平面束の変形族の構成はすでに解決しており、あとはそれを土台にして曲面の変形族を構成すればよい。堀川頴二による正則写像の変形理論を用いて今年度中に解決が見込まれる。 種数が4、階数が3の非超楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間の堀川指数の問題は、あと1つの問題が解決すればよい。問題をいくつかのパターンに場合分けをして考えているところであるが、いくつかのケースについては解決している。残りのケースについては少し難しいところがあるのだが、そのようなケースの曲面の例を得ており、解決のために十分に役立つと思われる。こちらも今年度中に解決が見込まれる。 また、一般ファイバーが種数が4、階数が4である非超楕円曲線であるようなファイバー空間を持つ曲面の堀川指数の総和の値を固定した場合の変形族の構成の問題も考慮中である。この問題も曲面の問題の解決のために、曲線上の3次元射影空間束の中のある種の相対2時超曲面の変形族の構成がまずなされなければならない。少し難しいところが残っているが、今年度中に大きく前進させることができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
一般ファイバーが種数が3の非超楕円曲線である楕円曲線上のファイバー空間を持つ曲面の変形族の構成の問題は、まず、射影平面束の変形族の問題の完全な解決を目指す。残っている問題は各同型類に対して、それを中心とする変形族における周りの射影平面側の同型類を決定することである。ファイバー束に関する文献をいろいろと調べて解決に結び付ける。この問題が解決したら、堀川による正則写像の変形理論を用いて、射影平面束の変形族を土台にして曲面の変形族の構成を行う。 種数が4、階数が3である非超楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間を持つ曲面の堀川指数の問題は、残っている1つの問題の解決を今年度前期のうちに解決を目指す。この残っている問題は、場合分けをして考えており、いくつかの場合については解決している。まだ解決していないケースは、そのようなケースの曲面の例を得ているので、その曲面の構造を解析することにより、解決のための情報を得ることをまずは考えていく。また、堀川指数に関する他の研究者による論文がここ数年で多く出版されているので、これらを熟読して手法を学び、我々の問題にも役立てていきたい。 種数が4、階数が4の非超楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間を持つ曲面の変形の問題は、その相対標準像を含む曲線上の3次元射影空間束の相対2時超曲面の変形族の構成を最初に解決する。大筋ではできているのだが、こちらも問題が1つ残っている。特異ファイバーを含むケースなので、扱いが難しいのだが、高次元代数多様体の分類理論に関する文献を多く当たり、解決のための方策を練っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は参加した研究集会が近場であり、旅費が予定していた使用額を大幅に下回る額しか使用できなかったことが大きな理由である。また、研究調査等のため東北大学へ頻繁に出向くことも計画の中に含まれていたのだが、所属校の事情によりその際の旅費が大幅に減額されたことも理由の1つである。
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次年度使用額の使用計画 |
可能な限り多くの研究集会に参加をすることを予定している。現段階ではまだ本研究に関連する内容の研究集会に関する情報が入ってきていないので、具体的な旅行の予定はここには記載できないが、早めに情報を得て計画を立てていきたい。
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