本研究は非特異射影曲線上のファイバー空間の構造を持つ射影曲面について詳しくその構造を調べるというものである。主としてその一般ファイバーが非超楕円曲線となるものを扱ってきた。研究内容は、ファイバー空間の勾配および勾配等式に関する研究、勾配が下限の値をとる場合の曲面の詳しい構造と変形理論に関する研究である。我々は一般ファイバーの種数が3および4の場合に限定して研究を進めてきた。 一般ファイバーの種数が3の場合は、本研究の前に成果を得ている楕円曲線上のファイバー空間をもち、勾配が下限の値をとる曲面の分類理論を基に、今回の研究においてはこれらの曲面の変形族を構成する、という問題に取り組んだ。この変形族の構成のためには、曲面の相対標準像を含む楕円曲線上の射影平面束の変形族の構成が必要である。この射影平面束の変形族に関する問題を部分的にではあるが解決し、成果を論文として公表した。この成果を基に今後は曲面の変形族を構成に関する研究を進めていく予定である。一般型代数曲面のモジュライの理論の一部として意義のあるものとなろう。 また、関連する問題として、楕円曲線上の局所的に自明なファイバーが種数が3の非超楕円曲線であるファイバー空間の構造を持つ曲面の分類につながる結果も得ることができた。別の論文にまとめ、掲載予定である。 最終年度は、一般ファイバーが種数が4、階数が3の非超楕円曲線であるファイバー空間に関して、その乗法写像が全射にならないための必要条件をある種の不等式で表すことに成功した。さらに、この不等式において等号が成り立つ例を2つ構成することができ、我々の不等式が良い評価であるという結果も得られた。この研究の結果は一般ファイバーの種数が4以上のファイバー空間に対する勾配等式の問題を扱う際、有力な情報を提供するものと思われる。現在、投稿中である。
|