研究課題
基盤研究(C)
本年度は、ミラー対称性の計算方法の幾何学的再構成法を、これまでの2点グロモフ--ウィッテン不変量から、多点グロモフ--ウィッテン不変量の場合に拡張する事について成果があった。特に複素射影平面のグロモフ--ウィッテン不変量をミラー対称性を用いて計算する方法を具体的に構成した。まず、(2+n)個のmarked pointを持つ2次元球面から複素射影平面への擬写像のモジュライ空間を、2次元球面の特別な2個のmarked pointを固定する複素数の乗法群の作用に関する幾何学的不変式論でコンパクト化したモジュライ空間を構成した。次に、このモジュライ空間上の位相的交点数で、基本的には複素射影平面の種数0のグロモフ--ウィッテン不変量と同じ意味を持つものを定義した。しかし、この交点数は、用いるモジュライ空間がグロモフ--ウィッテン不変量を定義するのに用いる安定写像のモジュライ空間と異なっているために、一般にはグロモフ--ウィッテン不変量とは一致しない。私は、この交点数の母関数を複数個考え、それらのうちの3個が、ミラー対称性によるグロモフ--ウィッテン不変量の計算で用いられるミラー写像として使えると予想し、さらに、そのミラー写像の逆写像を用いて、残りの母関数を変数変換すると、それらがグロモフ--ウィッテン不変量の母関数を与えると予想した。私は、この交点数を具体的に計算する公式を導出し、予想の正当性を数値的に確かめた。また、写像の次数が低い場合について証明を与えた。また、北大の清水将英氏とともに、この構成法を複素射影平面の開弦に対するグロモフ--ウィッテン不変量の場合に拡張した。
3: やや遅れている
今年度は、ミラー対称性についての専門書を執筆する依頼があり、執筆に大幅に時間を割いたので、申請書の研究目的の課題の達成のためにはあまり時間を充てられなかった。その代わり、国内外の種々の研究会で研究成果を発表する機会に恵まれた。
今年度は、落ち着いて研究できる時間が取れると思われるので、私の方法によるミラー対称性の幾何学的証明の鍵となる対角アノマリーの分析を進めたいと思う。
旅費を使う予定が無く、物品を買うには不足したため、繰り越すことにした。Windows 7対応のデスクトップパソコンを買うための費用の一部に充てる。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)
International Journal of Geometric Methods in Modern Physics
巻: Vol. 11, No. 1 ページ: 1450005
10.1142/S0219887814500054
Communications in Mathematical Physics
巻: 323 ページ: 747--811
10.1007/s00220-013-1786-y