研究概要 |
閉リーマン面の退化族と複素二次元特異点の比較を行う際に, 極大イデアルサイクルは重要な対象である. これは特異点の重要な不変量である重複度とも密接な関係を持つ。複素二次元特異点の極大イデアルサイクルについて, 種々の研究を行った。主に行ったのは, 有理特異点(X,o)の巡回被覆として得られる特異点(Y,o)の極大イデアルサイクルの計算法を求め, これに従い, 極大イデアルサイクルと基本サイクルにギャップが生じる場合を調べた. 特に, (X,o)が巡回特異点の場合に, (Y,o)は極大イデアルサイクルと基本サイクルの比較を詳細に行った. 極大イデアルサイクルと基本サイクルの比較を通して, 今野ー長嶋(Osaka J. Math. 2012),Menー奥間の結果(Kyusyu J. Math., 2014) の一般化を得ることを, 現在実行中である. 今野ー長嶋, Menー奥間の仕事で扱っている特異点は、完全交叉なものであり、可換環論的にみて極めて特殊なものといえる。彼等は非特異点の巡回被覆を扱っているのに対し、我々は巡回商特異点の巡回被覆を扱っている。我々が扱う特異点は非Gorenstein環をアフィン環にもつものを含むなど、かなり一般的な対象である。 これまでに得られた成果として, 従来からの「射影直線を中心曲線とする複素乗法群作用特異点で極大イデアルサイクルと基本サイクルは一致するか?」という基本的問題に対して, 上記研究ではその反例が多く見つかった.
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