研究課題/領域番号 |
25400067
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 肇 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 名誉教授 (30011612)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ルジャンドル織物 / グロンオール予想 / 3階常微分方程式 / シュワルツ微分 |
研究実績の概要 |
微分方程式を幾何学的に研究する有力な方法は,接触幾何学と織物理論を用いるもので,本研究の目的は,様々な問題に対してこの方法により具体的な結果を得ることにある. 本年度は特に3次元接触多様体のd枚の互いに横断的なルジャンドル曲線からなるルジャンドルd織物を研究し,局所線形化可能の場合の,接触変換であるその線形化写像の一意性の問題を研究した.平面の3織物に対しての線形化写像の一意性の問題が,計算図表理論の基本問題で,グロンオール予想といわれ,100年以上経た今もいまだに解決されてはいない.我々の研究は3織物をルジャンドルd織物に変えた場合を考え, d が 4 以上の場合に,線形化写像の一意性を示し,その場合のグロンオール予想を肯定的を解決した.ルジャンドル織物は力学とも関係し,重要な研究対象である. 証明には,3階の常微分方程式の線形化問題において,研究代表者が以前に吉川敦子との共同研究で2種類の曲率の消滅が必要十分条件であることを示し,後に小沢哲也との共同研究で得た,その曲率の消滅が積分可能条件となるような線形偏微分方程式系を具体的に構成した方法を用いる,接触変換に対して,4個の接触シュワルツ微分を定義し,それらを係数として,3本の 2階線形微分方程式系が定まっていて,その系が積分可能の場合にその 4個の独立な解の射影化が,3回常微分方程式が線形化可能の場合の線形化写像である接触変換を与えるという結果である.d が 4以上の場合に線形化可能のルジャンドルd織物は,1本の線形化可能3階常微分方程式を定め,その線形化写像は,線形偏微分方程式系の解であることにより,線形写像を除いて一意性が結論される.さらにd が 3 の場合,あるいは 4次元エンゲル多様体での織物などのの一意性の問題はこれからの課題として残っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルジャンドル織物は,物理現象を記述する力学の問題の数学的表現にもなり,応用も多いと思われる.そのような問題に対して,解が線形関数として表現される場合に,その解が一意的であるかどうかは基本的に重要な問題である.また織物の横断的な葉層の数も,自然現象においては多くなることが一般的である.そのようなルジャンドルd織物に対してのグロンオール予想を示すことが出来たのは,重要な成果である.また,他の幾何構造については,経済学の効用理論に関係するラグランジュ2織物に対する研究も進行中である.我々の課題の研究は順調に進展していると考えられる
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今後の研究の推進方策 |
研究課題は接触織物理論の種々の幾何構造への応用を目的としていた.自然現象を記述する力学や,社会現象の需要と供給の均衡を計るミクロ経済学などが,接触織物理論の応用対象に成ると思われる.サミュエルソンは,経済均衡を与えるシンプレクティック平面の 2織物の条件を幾何学な面積条件として表現した.これは熱力学にも表れる美しい形の表現である.我々はこれを,高次元シンプレクティック空間のラグランジュ2織物として捕らえ,その均衡条件を高次元非調和比の等式として表現する研究を行う.またそれに関連する高次元幾何構造の研究に発展させたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定されていた研究会よりも,次年度の研究会の方が研究の内容により適合するため,次年度の研究会に多く参加する方が,研究の遂行により効果的であると考えた.
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次年度使用額の使用計画 |
国内外のより多くの研究会に参加して,研究連絡,発表を行い,他の研究者との十分な討論の機会を持つ.できれば研究会を自分で計画し.研究の進展をりたい.
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