研究概要 |
本研究課題の目的は, ハミルトン-ペレルマン理論の類似が構築し得るような幾何学的フローの性質を, 統一的視点から調べることである. 本年度は主に, リッチフローに付随する共役熱方程式の解に対する微分ハルナック不等式を, リッチフローとは限らない, より一般的な設定の下で考察した. 具体的には, 一般の対称テンソルに関する幾何学的フローに対する非線形共役熱方程式を導入し, その解に対する微分ハルナック不等式を証明した. 特に, 考えている対称テンソルがリッチテンソルの場合はリッチフローであり, この場合は, 我々の研究成果からハミルトンらによって証明されていた微分ハルナック不等式が自然に導かれる. さらに, リッチフローの一般化である, ListフローおよびMullerフローに対しても, 我々の研究成果から, これらのフローに付随する共役熱方程式の解に対する微分ハルナック不等式を新たに, しかも容易に導くことができる. これらの研究成果を論文として専門雑誌に投稿し, 受理された. さらに, 上記の研究成果をさらに発展させて, 考察する共役熱方程式に非線形項を入れたより複雑な場合に関しても共同研究を行い, ほぼ満足のいく研究成果を得ることができた. その研究成果は, 2編の論文としてarXiv上に公表した. 現在, これら2編の論文も専門雑誌に投稿中である. またさらに幾何学的フローに対するソボレフ不等式とその応用に関する研究も行い, 一定の研究成果を得ることができた.
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