研究課題/領域番号 |
25400093
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
寺垣内 政一 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80236984)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | L空間 / 巡回分岐被覆空間 / 結び目 / Q多項式 |
研究実績の概要 |
ヘガード・フロアーホモロジー論において,擬交代絡み目という概念が導入された.結び目理論における古典的概念の一つである交代絡み目の一般化に相当する.擬交代絡み目の重要性は,その2重分岐被覆空間がL空間になるという事実にある.近年,L空間の重要性が認識されることに相伴って,擬交代絡み目という族の研究が進行しつつある.しかしながら,結び目・絡み目が擬交代かどうかを判定することは一般に困難であった.コバノフ・ホモロジーや結び目ヘガード・フロアーホモロジーなどが擬交代性の判定に使えることは知られていたが,それらホモロジーの計算,評価は容易ではなかったからである. ところが,2014年,結び目・絡み目の多項式不変量の一つであるQ多項式の最高次数と行列式による非常に簡明な判定法が発見された.本年度の研究では,この新しい判定法の改良を行った.これにより,以前より多くの結び目・絡み目に対して,容易に擬交代性の判定が行えるようになった.この成果は論文にまとめ,すでに国際学術雑誌から出版されている. また,昨年度の研究を継続し,結び目の巡回分岐被覆空間がL空間かどうかという課題に取り組んだ.交代結び目の2重分岐被覆空間はL空間であることが知られていたが,3重分岐被覆空間について考察した.一般にはL空間とはならないが,種数1の交代結び目の場合,L空間であることを証明した.この結果は論文にまとめ,国際学術雑誌に受理されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り,結び目の巡回分岐被覆空間の考察を行い,成果を獲られた. また,多項式不変量による擬交代性の新たな判定法に対して,早々に改良を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
まず,多項式不変量を用いた擬交代性の判定法のさらなる改良に取り組む.Q多項式の2変数化にあたるカウフマン多項式や宮澤による多項式を用いた判定の開発を行う. また,結び目群が両側不変順序を許容するかどうかの新しい判定法が2014年に発見された.これにより,ファイバー型でない結び目についても,両側不変順序をもつかどうかが判別可能になった.これと関連して,結び目群に現れる一般ねじれ元が注目されている.両側不変順序を許容しない結び目は,そのようなねじれ元をもつと予想している.結び目群の構造が簡単なツイスト結び目に対して,一般ねじれ元の存在を明らかにしたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外渡航を行わなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究成果を複数回,国内外の学会等において発表する.
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