26年度の研究では,擬交代絡み目に対して,結び目・絡み目の多項式不変量の1つであるQ多項式の最高次数と行列式を用いて,簡明な判定法を得た.Q多項式は1変数の多項式不変量であり,その2変数化としてカウフマン多項式が知られている.最終年度では,カウフマン多項式のz変数の最高次数と行列式を用いて,擬交代絡み目の満たすべき必要条件を導いた.特に,交代的でない擬交代結び目については,明快な評価式を得た.副産物として,行列式の値が5になる擬交代絡み目をすべて決定することができた.この結果は論文にまとめ,国際学術雑誌から出版されている. また,結び目群が両側不変な順序構造を許容する場合,共役ねじれ元とよばれるものを含むことはない.言い換えれば,共役ねじれ元の存在は,両側不変な順序構造の障害となっている.2014年にNaylorとRolfsenによって,結び目群に共役ねじれ元が含まれる双曲結び目が初めて発見された.彼らは結び目表において5_2とよばれる双曲結び目に対して,計算機を用いてその元を発見している.その結び目はツイスト結び目とよばれる無限系列に属するものである.最終年度の研究では,Rolfsenたちの結果を,すべてのツイスト結び目に拡張することに成功した.計算機を用いるものではなく,簡明な語の変形にのみよるものである.この結果は論文にまとめ,すでに国際学術雑誌に受理されている.
|