結び目とは3次元空間内の輪であり、連続的に動かしても同じ結び目と見なす。ただし、動かす際に、輪の紐同士を交わらせてはならない。自明結び目とは上記のように動かして平面上に交差無く配置できる結び目のことである。3次元空間内の縦軸とそれを境界とする半平面(頁)をn枚用意する。結び目が各頁と1本のアークで交わるように配置されているとき、アーク表示されていると言う。アークの端点を頂点と呼ぶ。Cromwellはどんな結び目もアーク表示を持つことを示した。Dynnikovは、自明結び目のアーク表示は、アークの本数を変えないエクスチェンジ変形と本数を減らすマージ変形のみでアークが2本の表示に変形できることを示した。2本の表示まで減らすのに最大何回の変形が必要か、nの式で求めるのが当該年度の研究目的である。マージ変形できるまでに最大何回のエクスチェンジ変形が必要であるかが問題である。今までに調べた範囲での最大値はn=7のとき1回、n=8のとき2回、n=9のとき4回、n=10のとき7回、n=11のとき11回であり、nが9以下のときは全ての場合を調べたうえでの最大である。残念ながら、n=12のときは数が多すぎてメモリが足りず、うまく計算できていない。n=9 のときの具体例はエクスチェンジ変形が1箇所しかできないので、そのような自明結び目のアーク表示を全て求めた。n=10のとき、そのようなもののうちでマージするまでに必要なエクスチェンジの最大回数は6であり、n=11のときは9であった。n=12のときはまだ計算途中である。全体での最大値を実現する例がこの形で表されるわけではないことが分かったが、エクスチェンジできる場所が少ないほうがnが一般のときの必要回数の評価がしやすいと思われる。また、カンドル彩色を用いて自明結び目であることを判定する方法を発案し、10交差点の図まではそれが上手く行くことを示した。
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