3次元多様体の基本群の副有限完備化は、トポロジーと整数論を結ぶ2つの観点から重要である。3次元多様体の基本群のSL(2;C)-表現はジェネリックな状況では、複素数体Cよりも、より小さい有理数体Qのある有限次代数拡大体上の2次元SL表現で実現される。この有限次代数拡大の代数的な性質やそのGalois群自体やGalois群の不変量の集合、あるいは表現の空間への作用を調べることは、副有限完備化の観点からも重要であると考えられる。 基本群のSL(2;C)-表現を用いて定義されるReidemeister torsionという複素数値不変量も上のような場合では、その値はその有限次代数体に含まれる。この不変量は基本群と表現の組に関して値が定まるので、この不変量の値の集合を零点集合に持つ多項式が、幾何学的に良い状況の下では定義される。この多項式がもし既約な多項式であるならば、それはReidemeister torsionのある1つの値に関するQ上の最小多項式と一致することが定義から直ちに示される。 この多項式をBrieskornホモロジー球面の場合に、正規化された第2種Chebysche多項式を用いる記述をAnh Tran氏(テキサス大学ダラス校)との共同研究で得た。これはこれまで得られていたトーラス結び目に沿った1/n-Dehn手術で得られるBrieskornホモロジー球面の場合の公式の一般化になっている。 また、8の字結び目に沿ってDehn手術をして得られるホモロジー球面に関しても、同じく正規化された第1種Chebyshev多項式を用いた記述をTran氏との共同研究で結果を得た。
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