研究概要 |
(1)ガウス超幾何級数 F(a,b,c;x)に対してf(w)=F(pw+a,qw+b,cw;x)とおく.我々の課題はf(w)がガンマ乗積表示を許すようなパラメータ(p,q,r;a,b;x)を特徴付けることである.ガウス超幾何級数という最も古典的な超幾何級数に対しても,この問題は完全な解決からは程遠い.本研究を始めるに当たって,初年度は種々の基盤整備を行った.先ずオイラー積分表示へ鞍点法を適用することによりf(w)の漸近展開を得た.またf(w)の極の分布に関する算術的な性質を確立した.その応用としてf(w)が高々有限個の極しか持たない場合(初等的な場合)のガンマ乗積表示を或るパラメータの範囲で全て決定した. (2)次の内容の論文2篇が出版された.パンルヴェ第VI方程式の解空間の中で,非初等的な閉曲線に沿う非線型モノドロミー写像で不変な既約コンパクト部分集合は,孤立周期解か超幾何関数解のなすリッカチ曲線かのいずれかに限る.また,周期解のなす曲線,すなわち周期曲線はリッカチ曲線に限る.孤立周期解の個数は周期と共に指数的に増大する.あるクラスの代数関数解は,リーマン・ヒルベルト対応を通じて指標多様体上の力学系の有限軌道の観点から特徴づけられる. (3)各パンルヴェ方程式の相空間は,葉層構造の特異点解消の観点から,ヒルゼブルフ曲面のブローアップの反復により構成された(1970年代). その後,第II型から第VI型までのパンルヴェ方程式については,相空間のシンプレクティック・アトラスの構成,及びその上の多項式ハミルトン構造が確立された.逆にこれらの幾何構造がパンルヴェ方程式を一意的に特徴づけることが示された(1990年代). しかし,これらは第I方程式については未解決であった.そこでハミルトン構造の代わりに軌道体ハミルトン構造を考えることにより,この問題を解決した (岡田脩と共同).
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