研究課題/領域番号 |
25400104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
竹内 潔 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70281160)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代数解析学 / 特異点理論 / モノドロミー / 超幾何関数 / 偏屈層 |
研究概要 |
まず合流型 A-超幾何関数の積分表示にあらわれる積分路の構成を工夫することで、その無限遠点のまわりのモノドロミーの公式を得ることに成功した。 合流型の場合はA-超幾何関数の大域的な性質はほとんど解明されていなかったので、これは重要な進歩であると思われる。 この研究と関連して、ローラン多項式により定義される局所系(局所定数層)のコホモロジーについて消滅定理を証明し、Gelfand-Kapranov-Zelevinsky の結果を拡張した。 これは近年盛んに研究されている超平面配置の補集合の上の局所系の研究を超曲面配置の場合に一般化する最初のステップである。 また多項式写像のモノドロミーに関してはそれほど大きな進展はなかったが、そのかわりに多項式写像の分岐点について多くの研究成果を得た。 例えば Nemethi と Zaharia は多項式写像の分岐点を具体的に表示する公式を予想したが、これを多くの場合に証明することに成功した。 証明には偏屈層の理論とトーリック多様体の理論を用いた。 さらに多項式写像のターゲットが高次元の場合に Nemethi と Zaharia による分岐点集合の評価式を拡張した。 これらは今後大きな研究分野に発展することが期待できる。 井草ゼータ関数の研究においては、それに関するモノドロミー予想を少し易しくした、Denef と Loeser による位相的ゼータ関数に関するモノドロミー予想を研究した。 これまでの研究では2変数や3変数の多項式について予想を証明する研究結果がほとんどであったが、非退化な多項式について高次元でモノドロミー予想を証明するために必要な命題をいくつか証明した。 これにより、高次元でも多くの場合にモノドロミー予想を検証することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合流型A-超幾何関数のモノドロミーについては、当初の予想よりもずっと早く一般的な公式を得ることが出来た。 この結果についてはすでに論文を執筆し雑誌に投稿した。 また多項式写像のモノドロミーに関しては大きな進展はなかったが、そのかわり多項式写像 の分岐点について多くの研究成果を得た。 これらについてもすでに2編の論文を執筆し投稿した(そのうち1編は掲載が決定)。 井草ゼータ関数については、そのモノドロミー予想をやや易しくした位相的ゼータ関数について多くの中間的な結果を得た。 さらにこれらの研究の過程で、ローラン多項式に付随する局所系のコホモロジー消滅定理などの副次的な成果も得られた。 すなわち予想通りの研究成果が得られなかった課題がある反面、予想を超えて大きく発展した課題もあった。
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今後の研究の推進方策 |
多項式写像のモノドロミーの研究については、当初計画した写像のモース化をみつける研究は行きづまってしまった。 そのため方針を転換し、大域的な Brieskorn lattice を考えるなどより代数的なアプローチを模索したい。 ニースの Duai などによる研究を高次元化するなどしてこの問題を解決したい。 モノドロミー予想に関しては、p進体上の解析に不慣れな点があるために今年度はより易しい(幾何学的な)位相的ゼータ関数の場合を研究した。 しかし位相的ゼータ関数の研究を通じてモノドロミー予想の背景にあるその極とモノドロミーの固有値の関係が明らかになりつつあるので、p進体上のD-加群の類似などを考えることにより予想を完全に解決する方法を模索したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本学では支払ベースで報告することとされており、3月中に予定通り執行したが4月に支払いとなったため残額が生じた。 4月に支払われる予定である。
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