研究課題/領域番号 |
25400106
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
竹縄 知之 東京海洋大学, その他部局等, 准教授 (70361805)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パンルヴェ方程式 / 力学系 / 非自励系 / 有理曲面 |
研究実績の概要 |
今年度はまず,有理楕円曲面上の自己同型が定義する力学系の非自励化として離散パンルヴェを導出することに取り組んだ.有理楕円曲面は(退化した)楕円曲線をファイバーとするファイバー構造を持ち,それらはQuispel-Roberts-Thompson(QRT)写像と呼ばれる自己同型によって保たれるが,非自励化はファイバーを指定するごとに異なることを明らかにした.また,非自励化した式は一般には楕円差分パンルヴェ方程式となり,複雑な表式を持つが,それらを簡潔に書き下す方法を発見した.もともとQRT写像は簡潔な表示を持つので,本研究で得られた結果と合わせて,より簡潔な離散パンルヴェ方程式の表示を得る方法を確立できたことになる.これらの研究はルーマニア核物理研究所のA. S. Carstea氏,ノーザンコロラド大学のA. Dzhamay氏と協力して行った(論文準備中).部分的な結果をシアトルで行われたJoint Mathematics Meetingsにおいて発表した. また昨年度に引き続き,A. Dzhamay氏と協力してフックス型線形常微分方程式のシュレジンガー変換として離散パンルヴェ方程式を導くための研究を行い,固有値が縮退した場合を含む一般的な明示公式を得た.この結果の一部がContemporary Mathematics誌に掲載された. 昨年4月にジョージア大学で行われた非線形波動に関する国際研究集会で,8月に北京で行われた国際応用数理学会でそれぞれセッションの世話人を務め,海外の研究者を招いて議論を行い,自らも昨年度までの研究に基づいて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
離散力学系における初期値空間の存在と可積分性とのギャップの解析的な特徴付けに関しては,非自励化の研究を通して,双線形形式を導くための鍵となる公式を発見したことが一つの前進となる.可積分な場合と,そうでない場合についてこの公式の適用結果を比較することで,新たな特徴づけができると期待される.この方法はもう一つの研究テーマである高次元のときにも有効であると期待されるので,おおむね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き初期値空間の存在と可積分性とのギャップの解析的な特徴付けに関して研究を進める.当初の計画には含まれていなかったが,昨年度の研究で発見した楕円差分パンルヴェ方程式の楕円差分パンルヴェの枠内での退化について分類を行う.併せて高次元の場合についての研究を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
主として一昨年度の旅費使用額が計画よりも少なかったことを今年度も引き継いだため.
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次年度使用額の使用計画 |
国際共同研究者を招待するのに使用する.
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