研究課題/領域番号 |
25400108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
伊藤 秀一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (90159905)
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研究分担者 |
柴山 允瑠 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (40467444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シンプレクティック写像 / バーコフ標準形 / 超可積分系 / ハミルトン系 |
研究概要 |
本研究の目的はリウビルの意味での通常の可積分系よりも過剰な個数の第一積分をもつ系(超可積分系)に代表される退化可積分系の特異点近傍での解の様相と,その摂動に対する安定性・不安定性を追求することにある。そのために解決すべきいくつかの問題の中で,本年度は超可積分な写像の不動点のまわりでの標準化問題を中心に研究を行った。 まず,写像の場合には共通の第一積分をもつ可換な写像について考えることが基礎になるため,可換なシンプレクティック写像のバーコフ標準化の証明の際に生じるさまざまな技術的障害を再検討し,より明快な証明をつけることに成功した。 また,写像の線形部分を半単純と仮定せずにバーコフ標準化問題の研究を行った。これはハミルトン関数のバーコフ標準化問題の場合からの類推として,以前より予想していたものであるが,技術的な困難があり,研究が停滞していた。この問題の完全解決に向けて部分的結果を得ることができた。また,その研究の過程で,ベクトル場の流れの埋め込みによるアプローチも試みた。これは直接的な方法と比べて利点もあり,一般の写像の場合の研究を進める際のアイデアともなり得ると考えられる。 研究計画に挙げたこれ以外の問題の中で,超可積分ハミルトン系の摂動問題についての研究の具体的進展はなかったが,アーノルド拡散についての先行研究について精査し,共鳴現象から生まれる解の不安定性のメカニズムについてさまざまな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超可積分系の摂動問題にとりかかることができなかった。その大きな理由は写像の標準化問題を線形部分の半単純性を取り除いて考えることに多くの時間を割く結果になったことにある。
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今後の研究の推進方策 |
シンプレクティック写像のバーコフ標準化問題から半単純性の仮定を取り除く問題をできるだけ早く解決するとともに,超可積分なハミルトン系に対するLiouville-Arnold の定理の拡張,および特異点における超可積分ベクトル場の標準形に関する成果をまとめる.それと同時に,超可積分系の摂動問題の研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,研究代表者が海外研究者を訪問し研究課題に関する討論等を行う予定であったが,スケジュールの問題からできなった。また,研究の進捗状況から考えても,次年度にまわしたほうがより効果的であると判断された。そのため,無理な予算執行を行なわずに,次年度の執行にまわすことにした。 平成26年度に海外研究者の招聘ならびに訪問を計画している。また,国際研究集会への参加のための旅費として研究費を用いる予定である。
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