本研究では,通常の可積分系よりも過剰な個数の第一積分をもつ系(超可積分系)に関わる諸問題の研究を行った。その主な成果は以下のとおりである。 伊藤は解析的ベクトル場の平衡点の近傍における解析的標準化に関して超可積分性の観点から研究を行った。とくに,楕円型平衡点の共鳴度を定義し,与えられた系が共鳴度に応じた個数の第一積分と可換な解析的ベクトル場をもつならば,解析的変換によって Poincare-Dulac 標準化ができることを示した。この結果は,可換なベクトル場の組に対する解析的標準化に関する先行研究の仮定を部分的に一般化した上で別証明を与えたものになっている。この成果については,国内外の研究集会で発表を行ったが,これにはいくつかの自然な一般化の余地があり,それらの研究は今後の課題である。 一方,柴山はハミルトン系の可積分性の問題を衝突特異点の正則化を通じて捉えるという新しいアプローチを提言し,同次ポテンシャルをもつ自由度2の解析的ハミルトン系がハミルトニアン以外の解析的第一積分をもたないための十分条件を与えた。この成果は衝突多様体理論の新しい応用の方向を与えるものになっている。 最終年度では2名の海外の研究協力者に本研究の成果に関する評価をしてもらうとともに,今後の研究の発展につながるさまざまな討論を行った。とくに,2017年3月にはうち1名の研究協力者を招聘し,第6回「ハミルトン系とその周辺」研究集会を開催し,本研究に関連するさまざまな問題について貴重な討論の機会をもつことができた。
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