研究課題/領域番号 |
25400112
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
桐木 紳 東海大学, 理学部, 教授 (50277232)
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研究分担者 |
相馬 輝彦 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50154688)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 力学系 / トポロジー / 双曲力学系 / 非双曲力学系 / ホモクリニック接触 / 遊走領域 |
研究概要 |
Smaleが提唱した力学系研究の枠組みは,与えられた力学系の不変集合での振舞いを幾何学的側面や測度論的側面から双曲性・非双曲性というキーワードを使い明らかにしていくものである.これに対し不変集合の補集合での振舞いは「自明な」ものしかないと仮定しあまり研究されてこなかった. これは自明な振舞いをもつ例しか知られていなかったことに起因する.本研究の主目的は,微分同相 写像による力学系が非双曲的であるとき,不変集合の補集合に「非自明な」振舞いをもつ(具体的に は非自明な遊走集合をもつ)ような微分同相写像で近似されることを証明することによってSmaleが提唱した力学系研究の枠組みを根本的に拡げることにある. Smaleの馬蹄系に代表される双曲的力学系においては不変集合以外では自 明な遊走集合しかないと仮定するのは自然かもしれないが,非双曲的力学系においてそれを仮定して よいという数学的根拠はない.それどころか Colli-Vargas [Ergod.Th.&Dyn.Sys. 21 (2001)] は,この 例が非自明な遊走領域をもつことを証明した.このColli-Vargas の限定された対象にたいする結果をより一般的な非双曲力学系に拡張することがこの本研究の研究の核となる.具体的に証明する予定の定理は次の通りである: 【定理】ホモクリニック接触を持つような任意の2次元非双曲的微分同相写像は非自明遊走領域をもつような微分同相写像で C2 近似できる. 現在,証明が出来上がり論文作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は証明を完成させることであり,実際証明することができた.具体的には, 【定理】ホモクリニック接触を持つような任意の2次元非双曲的微分同相写像は非自明遊走領域をもつような微分同相写像で C2 近似できる. に証明をつけることに成功したと信じている.現在,研究分担者とその結果をまとめた論文を推敲中である.しかしながら証明の内容は非常に複雑で,査読者に納得してもらうにはなおいっそうの推敲が必要だと思っている.また,この分野のパイオニアであるブラジルのVargas氏と連絡を取り合い,我々の研究成果を理解してもらう予定でいるが,まだ連絡をつけられない状況である.
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今後の研究の推進方策 |
論文をarXiveにて発表した後,この分野のパイオニアであるブラジルのVargas氏やイギリスのvan Strien氏と連絡を取り合い,我々の研究成果を理解してもらう予定でいる.そのためには今年度中に両者を訪問する予定である.また,彼らの意見もよく考慮し,国際的なジャーナルに投稿する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は旅費の未執行によるものである.具体的には前年度中に海外出張に行く予定であったが,先方の都合によって延期になった.そこで次年度に,この分野のパイオニアであるブラジルのVargas氏と英国のvan Strien氏の両方を訪ね,研究成果を説明する予定でおり,それらの旅費に使用する予定である. 具体的にはまたコンピュータを1台購入し,次の2件の旅費に使用する予定である: ・8月以降にブラジル IME-USPのEdson Vargas氏とEduardo Colli氏を訪ね,研究成果を説明する. ・12月以降に英国 ICLのSebastian van Strien氏を訪ね,研究成果を説明する.
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