特異摂動型の微分方程式においてボレル総和可能ではないが多重総和可能である形式解を研究する観点から、非線型固有値問題に現われる非線型一階常微分方程式を考察した。その方程式の形式解の大きいパラメータに関する展開の展開係数は原点において特異性を持つが、その特異性は有理関数を係数とするリッカチ方程式では見られなかったタイプのものとなっている。そのため、レベル曲線が原点に流れ込む場合には形式解がBorel総和可能であるかどうかは従来の方法ではわからなかった。だが、この方程式の非線型項は超越的なものとなっており、それを 2 次までの項で打ち切ってリッカチ方程式にして考えてみると、そのリッカチ方程式の形式巾級数解はボレル総和可能ではなく、多重総和可能となることが期待されるものとなっている。そのため、この非線型方程式も多重総和可能性が必要ではないかと予想される。この予想を検証すべく、考察を与えた。 その研究のためにリッカチ方程式の形式解のボレル総和可能性の証明手法の改善をまず試みた。従来はボレル平面での帯状領域上で形式解のボレル変換の評価を与えていたが、考える領域を角領域にすることとした。領域を広げたため、方程式の係数の仮定は強くなったが、考察の結果、結論も強めた形で得られることがわかった。この手法は非線型固有値問題にあらわれる方程式にも適用できると考えられ、その結果前述の形式解はボレル総和可能であろう、という現時点は考えている。非線型項を2次までで打ち切ったものと全ての項を考えたものでは結論が異なることになり、今後の特異摂動の問題における形式解の多重総和可能性を考える上で興味深い結論が得られたと考えている。
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