研究実績の概要 |
実軸の区間I で定義された実数値連続関数f(t) が与えられたとき,I にスペクトルを持つすべての有界自己共役作用素(あるいは行列)X に対してf(X) が定義できる。この作用素関数f(X) を作用素順序,固有値分布,解析接続の観点から研究し,作用素の摂動による固有値の非線形現象を解析すると共に関数f(t)が多項式あるいはガンマ関数などの特殊関数の場合に応用し,多項式系やガンマ関数等の研究を推進していくことがこの研究課題の目的である。平成27年度の最初の研究成果は千葉大学教授渚勝氏との共同研究が Tohoku Math. J. (2) 67(2015), no.1,39-50から出版されたことである。その内容は次のとおりである。正値作用素 B が A より大である時、X とB の作用素平均は X と A の作用素平均より大であるが、実は逆命題は成立しない。どのような条件を課せばその逆命題が成立するかということを私の前年に出版された論文の結果を基に調べたものである。 その他に、作用素環の間の線形作用素Φと作用素凸関数 g に関する Kadison, Davis, Choi, Petz, Arvesonの結果を拡張・発展させることを目標として研究してきた。具体的には自己共役作用素 A と正線形写像Φが与えられたとき等式Φ(g(A))=g(Φ(A)) が作用素凸関数 g について成立すればこの等式は g をすべての連続関数に置き換えても成立する、即ちΦが代数的積の演算を保存することが知られている。Choi氏はこの定理の作用素凸関数 g を直線以外の一般的な関数 g に拡張できるのではないかと予想した。この予想を完全に証明し、その結果を論文として纏め現在投稿中である。なお、その一部は立命館大学でのセミナーと九州大学でのセミナーで公表し、Hanoi Univ. of Science and Technologyでの研究集会で講演した。
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