研究課題
研究代表者・伊藤は、メルボルン大学 Peter J. Forrester の協力を得て、Dixon-Anderson型q-級数(A型楕円超幾何関数のパラメータp→0の極限として得られると想定される級数)の和公式に関する成果を2本の共著論文にまとめた。これらは学士院紀要 Ser. A Math. Sci. および J. Math. Anal. Appl. 誌に掲載された。また研究代表者・伊藤は、メルボルン大学 Nicholas S. Witte の協力を得て、Askey-Wilson型積分(1変数BC型楕円超幾何関数のパラメータp→0の極限)が満たす差分方程式系を応用して、数理物理における1次元量子sl_2普遍XXZモデルの量子逆散乱法および直交多項式系との関連を議論し、共著論文にまとめた。これも J. Math. Anal. Appl. 誌に掲載された。楕円超幾何関数の差分方程式を具体的に表示するには、差分ドラームコホモロジーの基底を決める必要があり、望ましい基底の取り方は「補間関数」という対称関数の族に関係することがわかっていた。平成25年度に引き続き、平成26年度も研究代表者・伊藤は連携研究者・野海正俊(神戸大)と「補間関数」の構成について議論を重ね、この研究が必要とする「補間関数」の具体的な表示を得た。また応用として、(1) BC型楕円セルバーグ積分の楕円ガンマ関数表示、(2) BC型楕円超幾何級数の和公式、に関する「補間関数」を用いた証明法を与えた。この証明では、積分を差分方程式の解とみなすことが重要で、その差分方程式の導出に「補間関数」が使われている。一方、差分方程式の境界条件は「補間関数」とは独立に求めなければならない。境界条件として、楕円超幾何に特有の漸近挙動を採用した。上記(1)(2)の内容を日本数学会年会(明治大学)「無限可積分系セッション」で発表した。
2: おおむね順調に進展している
楕円超幾何関数に付随する「補間関数」の研究が進んで、中間成果を学会で発表できたこと。
楕円超幾何関数に付随する「補間関数」の研究をさらに進めて、楕円超幾何関数が満たす差分方程式のランクが高い場合に「補間関数」を応用することで、その差分方程式の解の接続問題を解決する。接続問題を具体的に解くことによって楕円超幾何関数の和公式、変換公式を理解する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件)
Journal of Mathematical Analysis and Applications
巻: 421 ページ: 1101--1130
http://dx.doi.org/10.1016/j.jmaa.2014.07.056
巻: 423 ページ: 1704--1737
http://dx.doi.org/10.1016/j.jmaa.2014.10.034
Proceedings of the Japan Academy, Series A, Mathematical Sciences
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doi: 10.3792/pjaa.90.92