研究課題/領域番号 |
25400122
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
高木 太一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 応用科学群, 准教授 (00531766)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 可積分系 / 超離散化 / トロピカル幾何学 / 組合せ論 / 戸田格子 / ヤング図形 / ラックス形式 |
研究概要 |
トロピカル(超離散)周期戸田格子の等位集合は、保存量がgenericとよばれる条件を満たしている場合にはtropical Jacobianとよばれる実トーラスになることが知られているが、この条件を満たしていない場合はその大域構造は解明されていない。この条件がどの程度強い条件なのかを以下のようにして明確に示した。まず、通常は2種類の文字を使用して記述される従属変数たちを最初から1種類の文字の添え字の偶奇で区別するというアイデアにより、離散周期戸田格子のラックス形式から得られる保存量の最近接排他表現を従来の方法よりも明快に導出した。これをトロピカル化して得られるトロピカル周期戸田格子の保存量たちが「弱い凸性」を満たすことを組合せ論的な議論により証明した。上に述べたgeneric条件は「強い凸性」に相当する。言い換えれば、一般に保存量たちを一つのヤング図形で表すことができ、その腕の長さに重複度がない場合がgeneric条件を満たす場合である。 このヤング図形は通常の定義とは異なり、腕の長さは整数とは限らず一般に正の実数である。トロピカル周期戸田格子の特殊ケースに相当するセル・オートマトン(周期箱玉系)の場合には、ベーテ仮説の組合せ論に用いられるKerov-Kirillov-Reshetikhin全単射という写像によりヤング図形を構成した。この写像の連続化が目標の一つであったが、その具体的な記述の方法を確立した。特に、上に述べたラックス形式に起源をもつヤング図形と、このヤング図形が一致することを証明した。これは必ずしもgeneric条件を満たさない場合の等位集合の大域構造を解明するための重要な一歩であると考えられる。この結果に関して学術論文を執筆し、2014年1月に海外の専門誌に投稿した。現在、査読者からの報告書待ちである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたヤング図形の一致の証明については、特殊ケースに相当する周期箱玉系の場合には先行研究が存在するのでこれを参考にして一般化(連続化)を考えたが、先行研究の証明には不完全な記述や誤りと思われる記述が含まれており、正しい記述を考え出すのに予想外に時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
同じ分野の研究者のもとへ出向いて議論をしつつ研究を進めていく。一般のアフィン・リー環への拡張よりも、A型ランク1でやるべきことが多く残っているので、まずはそちらに集中して研究を行う。①連続化されたKerov-Kirillov-Reshetikhin全単射については未知の部分が多いので、この写像の性質を詳しく調べる。数式処理システムによるプログラミングを行い、具体例を多数生成して考察することが有効であると考えられる。②特殊ケースである周期箱玉系では等位集合は有限集合であり、generic 条件を満たさなくても体積(位数)公式が存在した。対応する連続極限での体積をスケール化の議論により予測し、それを証明する。③最新の研究動向について様々な手段で確認しつつ、単に自身の過去の研究の改良ではなく多角的な視点をもって研究のブレイク・スルーを模索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ノルウェーで開催された国際会議について、旅費・参加費が別の財団から支給されたため科研費を使用しなかった。 海外出張用の費用は翌年以降に繰り越し、最終年度で研究期間を1年延長して使用する予定である。具体的には、2016年にフランス・リヨンで開催されるIUPAP統計物理学国際会議において研究成果を発表するために出張することを予定している。本年度は国内出張旅費、研究打ち合わせのため国内外の大学・研究機関の研究者を招聘するための旅費、およびソフトウェアやトナーなど消耗品購入費用として科研費を使用する予定である。
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