研究課題/領域番号 |
25400122
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
高木 太一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 応用科学群, 教授 (00531766)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 可積分系 / ヤング図形 / 組合せ論 / 共形場理論 / 演算子積展開 |
研究実績の概要 |
前年度中にJournal of Physics A誌にて出版されたトロピカル周期戸田格子の保存量に関する論文の内容について、5月にイタリアで開催された国際会議NEEDS2015にて発表し、他の参加者との議論を行った。その後、この系の等位集合の構造に関する研究方針を検討したが、いくつかの困難があり進展が見込めなかった。そこで、同じ可積分系ではあるがやや異なる種類の問題を考え、視野を広げることによって研究のブレイクスルーの方向を探ることにした。具体的には、共形場理論における一般化されたWickの定理と頂点代数の公理の一つであるBorcherds恒等式との関係に注目した考察を深めることにより、演算子積展開の左右を入れ替えた形のWickの定理が上記の定理と類似の形式で記述できるという事実を発見し、その証明を与えた。論文を執筆し、28年度当初に専門誌に投稿する見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トロピカル周期戸田格子の等位集合についてはその研究の意義についての課題が見つかり、慎重に方針を定める必要があると考えている。具体的には、離散戸田方程式から引き継ぐ標準の時間発展以外の可換な時間発展の族を実現するアルゴリズムがきわめて人工的であるということである。この考慮のため、この問題に関する研究の進展は遅れている。しかし、可積分系の研究という枠組みで見た場合には概要で述べたような進展があった。これは、Baisらによる一般化されたWickの定理(1988)以来30年近く知られていなかった単純で美しい結果の発見である。具体的な計算への応用も可能であり、意義のある成果と言える。よっておおむね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
国内外の研究会に参加し、同じ分野の研究者たちと議論をしつつ研究を進めていく。トロピカル周期戸田格子の等位集合の構造決定については、問題の定式化を再検討したうえで再び挑戦するかどうか決める。数理物理学における最新の研究動向について様々な手段で確認しつつ、より波及効果の大きい問題設定のやり方があるかどうかを検討する。具体的には、7月の国際会議において概要で述べたWickの定理に関する研究成果を発表し、他の参加者たちとの議論を深めることにより次に解決すべき課題を見出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は予定していた出張の大部分ができなかったため、科研費をほとんど使用しなかった。そのため、その時点で研究期間を1年延長することを見込んで本年度の計画を立てたが、書類の形式上の理由により残額をすべて計上していた。したがって実質上は予定通りに使用しているといえる。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通りに研究期間の1年延長が認められたので、本年度の海外出張などに使用する。具体的には、7月にロシア・サンクトペテルブルクで開催される古典および量子可積分系国際会議において研究成果を発表するために出張する予定である。その他としては、9月に開催される物理学会(金沢大学)および数学会(関西大学)における研究発表のための出張、パソコンなどの備品およびソフトウェアやトナーなど消耗品購入費用として科研費を使用する予定である。
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