研究課題/領域番号 |
25400127
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤川 英華 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80433788)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 複素解析学 / 双曲幾何学 / リーマン面 / タイヒミュラー空間 / モジュライ空間 / 写像類群 / モジュラー群 |
研究概要 |
無限次元タイヒミュラー空間の幾何構造の構築のため,まずはじめに,タイヒミュラー空間上に作用するタイヒミュラーモジュラー群の力学系の考察を行う.有限型リーマン面に対する有限次元タイヒミュラー空間上とは異なり,無限型リーマン面に対する無限次元タイヒミュラー空間上では,タイヒミュラーモジュラー群の作用の様相は極めて複雑だが,その離散性,不連続性,安定性をはじめとする力学系理論を再構築し,タイヒミュラーモジュラー群の作用のカオス的様相とタイヒミュラー空間の非等質性をあわせて,無限次元タイヒミュラー空間および無限型リーマン面のモジュライ空間の構造理論を新しい研究対象としてとらえなおした. リーマン面が有界幾何を持つという条件のもとでは,双曲幾何学的な手法を用いてこれまでにかなり研究が進められてきた.今年度はこの条件を満たすとは限らない一般のリーマン面を扱うことを試みた.そして,タイヒミュラー空間上の力学系理論を考察する上で,リーマン面の境界成分の擬等角変形空間でありタイヒミュラー空間の商空間でもある漸近的タイヒミュラー空間の有用性を再度見いだし,漸近的等角類空間上(漸近的タイヒミュラー空間の各ファイバー上)での作用に着目した.その結果,擬等角写像類群の停留的な部分群に対して,不連続性が一様に起こることを証明した.そして,有界幾何を持つリーマン面に対してこれまで得られていた結果の一般化が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の結果の一部は,すでに論文にまとめて投稿した.また問題点と今後の課題も具体的に明らかになっている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果・知見をさらに発展させ,論文にまとめていく.議論を精査する中で未解決課題へのヒントが得られることも期待している.講演により成果を積極的に公表することで,新しい視点を議論したい.また関連する研究者と意見交換をすることにより,本研究の方向を確実なものにしていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
国内外の研究者との議論のための出張を予定していたが,今年度は主に研究代表者のアイデアをまとめることに時間がかかった.そのため,研究連絡と成果公表のための旅費を使用しなかった. 本研究分野は,複素解析学,クライン群,タイヒミュラー空間,双曲幾何,幾何学的群論などの周辺の多岐にわたっている.これらの分野では文献の種類も非常に多く,それらの秩序だった整備が必要である.そのため文献の調査のため書籍を購入する.関連する研究者と数学的手法や情報・知識の交換のため,日本人研究者のもとへ出張し,研究連絡を行う.また成果公表と議論のため,国内研究集会参加を5回程度予定している.これらのために国内旅費を使用する.また関連する外国人研究者との議論のための出張と,国際研究集会参加のために外国旅費を使用する.
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