研究課題/領域番号 |
25400129
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
菊池 万里 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (20204836)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マルチンゲール / Banach関数空間 / 準Banach関数空間 / Burkholder型不等式 / Doob型不等式 |
研究実績の概要 |
Lebesgue空間Lpから弱空間(Lorentz空間)w-Lpが定義されるのと同様の方法で,非原子確率空間上のBanach関数空間Xの弱空間w-Xが定義される.w-Xは研究代表者の菊池によって導入され,既にこの空間の構造に関する結果も得られている.25年度に続き,マルチンゲール理論を用いて弱空間w-Xの構造を解析する研究を進めた.25年度の研究によって,マルチンゲールfの2次変分Sfのw-Xに於ける準ノルムと,fの概収束極限のw-Xに於ける準ノルムが,互いに他の定数倍で評価される為の必要十分条件(Burkholder型の不等式が成立する為の必要十分条件)が得られていた.この結果に関連する問題の研究を進めたところ,25年度に得られた結果に加え,更なる必要十分条件を得ることができた.新たに得られた必要十分条件は,Xの上基本関数φと定数A>1に対してφ(At)/φ(t)のt→0+とするときの上極限,及び,下極限を用いて表現されるものである.更に,マルチンゲールfの極大関数Mfのw-Xに於ける準ノルムが,fの概収束極限のw-Xに於ける準ノルムの定数倍で評価される為の必要十分条件(Doob型の不等式が成立する為の必要十分条件)についても,25年度に得られた結果に加え,新たな必要十分条件が得られた.これもXの上基本関数を用いて表現される.26年3月の時点で,既に執筆を開始していた論文の内容を再考し,26年度に新たに得られた必要十分条件を付け加えるなどの変更を加えて書き換えることとし,現在投稿準備中である. 27年度は,Burkholder-Davis-Gundy型の不等式,及び,マルチンゲール変換に関する種々の不等式が弱空間w-Xに於いて成立する為の必要十分条件の導出を目標に,研究を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の研究により,Banach関数空間Xの弱空間w-Xに於いて,マルチンゲールfの平均振動θfに関する準ノルム不等式が成立する為の必要十分条件(作用素θが有界になる為の必要十分条件)を得て,論文として投稿した.この論文の掲載が決定し,既にオンラインで閲覧可能になっている.また,25年度の研究によって,弱空間w-Xに於けるBurkholder型やDoob型の不等式が成り立つ為の必要十分条件が得られていたが,26年度の研究によって,更に新たな必要十分条件を得ることができた.この為,既に執筆を開始していた論文に,新たな必要十分条件を付け加えて書き換えることとした.当初,Burkholder型の不等式に関する論文とDoob型の不等式に関する論文を分けて2つの論文にする計画であったが,新たな必要十分条件が得られたことにより,当初の計画を変更して2つの論文を1つに纏めた方がより良いものになると判断した.そのように書き換えて投稿すべく,現在準備中である.論文の数は減ることになるが,1つの論文としての価値が大きくなったと考える. 数学では,一般的に,論文にできる結果を得ること自体がかなり難しい.25年度と26年度の研究によって,数学では重要視されることの多い「必要十分条件」を得ることができた上,既に1篇の論文が(印刷中ではあるものの)オンラインで閲覧可能になっている.ここまでの研究の進展は,ほぼ計画通りである.このことから,本研究が順調に進んでいると判断したい.
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今後の研究の推進方策 |
XをBanach関数空間とするとき,Burkholder-Davis-Gundy型のマルチンゲール不等式,及び,マルチンゲール変換に関する種々の不等式が,弱空間w-Xに於いて成立する為の必要十分条件の導出を目指して研究を進めたい. Burkholder-Davis-Gundy型の不等式について,マルチンゲールfの極大関数Mfのw-Xに於ける準ノルムを,fの2次変分SfのXに於けるノルムで評価する不等式が成立する為の必要十分条件は,これまでの研究で用いた手法を改良することで導出できるもと思われるが,Mfのw-Xに於ける準ノルムをSfのw-Xに於ける準ノルムで評価する不等式が成立する為の必要十分条件を導出することは,容易ではないことが予想される. 他方,マルチンゲール変換に関する種々の不等式が成り立つ為の必要十分条件出については,これまでの研究で用いた手法を改良することで導出できる可能性が高いものと予想される.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の菊池は,本研究に加え,宮地晶彦氏(東京女子大学教授)が代表者を務める科研費「実関数論的手法による調和解析とその応用」(基盤研究(B)23340034)の分担者でもあった.事情により,この科研費の分担金が当初の予定より10万円多く配分されることとなった.更に,本研究の25年度からの繰越金が11万円ほどあった為,研究推進に利用できる経費に,大分余裕ができた.宮地氏が代表を務める科研費は,26年度が最終年度であり,研究代表者の菊池が27年度に他の科研費の分担者になる予定はない.このことを念頭に,27年度に利用できる旅費に余裕を持たせる為,約17万円を27年度に繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
研究代表者の菊池は,東京大学にて定期的に開かれているセミナーに参加しており,このセミナーが本研究の推進に大きく役立っている.27年度は,他の科研費の分担者ではなくなることを考慮し,26年度の実績とほぼ同額の旅費を確保する為,26年度の繰越金を27年度の旅費に充てる予定である.
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