研究課題/領域番号 |
25400137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
貝瀬 秀裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60377778)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 確率制御 / 確率論 / 数理ファイナンス / HJB偏微分方程式 |
研究概要 |
制御理論では制御力学系における状態を、制御と呼ばれるパラメータを動かすことでコントロールすることを目標とする。外乱などの系の不確かさはしばしば確率過程で表現されるが、一方でモデル化誤差に起因する不確かさに対しても頑健性を備えた理論の必要性が実務を中心に高まっている。工学において80年代初頭に提唱されたH無限大制御では外乱やモデル化誤差を未知の決定論的関数で表現し、数理ファイナンスにおけるG期待値ではボラティリティの取る範囲に幅を持たせ最悪の場合の期待値を計算し、これらの理論は頑健性を備えたモデルとして注目をされている。リスク鋭感的確率制御において特異極限を取ることによりH無限大制御がある一定の条件の下で得られることが知られているが、本研究の目的は数理ファイナンスにおける問題や一般的な確率制御において特異極限に相当するリスク回避的極限を取ることで頑健性を有する様々なモデルを導出し、それらに必要な数学的基盤を与えることである。また関連する制御問題を数学的観点から研究する。 本年度はファクターモデルと呼ばれる市場モデルにおいて、無限時間区間上の冪型効用関数の最適投資・消費問題に対するリスク回避的極限問題を考察した。単にリスク回避的極限を取ると自明な問題に帰着するため、リスク回避度をファクターの拡散が小さくなるにつれ大きくなるようにスケーリングし、その上でリスク回避的極限を取ることで微分ゲームを導出した。詳しくは無限時間最適投資・消費問題の最適期待効用がリスク回避的極限を通じて無限時間微分ゲームの値に収束することを示した。またその極限値を1階Isaacs方程式の一意的な粘性解として特徴付けた。この微分ゲーム問題はH無限大制御の意味での頑健性を備えていることから、最適投資・消費問題に対して新しいロバストモデルを提案することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファクターモデルにおける無限時間区間上の最適投資・消費問題に対してリスク回避的極限を通じて頑健性を持つ新しいモデルが得られ、研究目的に掲げた最適投資・消費問題におけるリスク回避的極限に関して進展が見られた。 またリスク鋭感的制御の特異極限問題や動的計画方程式の冪等代数的手法に関連して、経路依存型の期待値に対する動的重点サンプリング法の研究を開始し、研究成果が上がりつつある。上記の重点サンプリング法の研究にも着手したため、G期待値の研究の準備に若干の遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
最適投資・消費問題におけるリスク回避的極限に関して、無限時間区間の問題に対して一定の結果が得られた。これを踏まえて他のモデルや設定の下で引き続きリスク回避的極限問題に関する研究を継続し、頑健性を持つモデルの導出を試みる。 リスク鋭感的制御の特異極限や動的計画方程式の冪等代数的手法に関連して開始した経路依存型の重点サンプリング法の研究は、基本になる経路依存型の動的計画的法が必要となるが既存の研究が少ない。まずはその数学的基盤を与えることを目指す。このためG期待値の研究は遅れる可能性があるが、G期待値や関連研究に対して文献等で情報の収集に努め、可能ならば国内外の研究集会等に参加し関連研究者と意見交換を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究内容の計画の一部遅延による、当該計画のための書籍購入の次年度への繰り越し 遅延している計画の書籍を購入し、当該計画を次年度計画に合わせ遂行する
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