系における外乱はしばしば確率過程を用いてモデル化されるが、その統計的性質やモデルにおける係数などのモデル化誤差に対してロバスト性(頑健性)を持ったモデルの研究は理論と応用両面で注目されている。本研究では主にリスク回避的極限を通じてロバスト性を備えたモデルの導出を行い、それらに対する研究に必要な数学的基盤を与えることにある。 最終年度は、後向き確率微分方程式やG期待値等の分野で活発に研究されている経路依存系の近年の研究動向に沿い、経路依存型の決定論的系に対するロバスト制御の基礎理論の構築を試みた。具体的には、通常の動的計画法を一般化することで、経路依存型inf-sup型微分ゲームにおける値関数を、経路依存型Isaacs偏微分方程式の粘性解として特徴付けることに成功した。この研究を端緒に、これまでなされてきた膨大な動的計画的手法が経路依存型の系に対して展開されることが期待される。 研究期間全体を通じて、リスク回避的極限に関連するロバスト性を有するモデルの数学的基盤研究を行った。詳しくは、数理ファイナンスにおける最適投資(消費)問題のリスク回避的極限を考え、極限操作を通じて得られる数理ファイナンスに関連する新たなロバストモデルの提案を行い、それらに対する動的計画法による解析手法を与えた。また、一般の経路依存型確率制御問題のリスク回避的極限を動機として、この極限操作の結果として導出される決定論的系に対する経路依存型ロバストモデルの一般論の構築を行った。
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